【注目ポイント】 中国市場の競争激化が業績にどの位のインパクトがあるか⁉
株価(2023/1/25) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE* | ROIC* |
144.43USD(日中取引終値) | 4,561億USD(約59兆2,930億円) | 54.3% | 32.2% | 23.5% |
PER(実績) | PER(弊社予想) | PBR | 配当利回り | EV/EBITDA |
41.3倍 | 32.5倍 | 10.6倍 | N/A | 25.1倍 |
*注:ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。
2022年4Q決算結果
売上高 243億ドル(約3兆1,590億円、前年同期比37%増、2Q比13%増)
営業利益 39億100万ドル (同49%増、同5.8%増)
営業利益率 16.0% (同1.3pt増、同▲1.2pt)
四半期純利益 GAAP 36億8,700万ドル(同58.9%増、同12%増)
non-GAAP 41億600万ドル(同41.7%増、同12.4%増)
希薄化後EPS GAAP 1.07ドル
non-GAAP 1.19ドル
生産台数 439,701台(前年同期比43.8%、3Q比20.2%増)
販売台数 405,278台(同31.3%増、同17.9%増)
売上、営業利益、純利益、フリーキャッシュフローが過去最高を更新した好決算であった。時間外取引で株価は5.5%上昇した。ドル高による営業利益への影響は約▲3億ドルであった。自動車の粗利益率は前年同期比▲4.7pt、3Q比▲2.0ptの25.9%であった。営業利益率は前年同期比1.3pt上昇、3Q比▲1.2ptの16.0%であった。営業利益率の低下は値下げ、原材料価格上昇、ドル高等によるものであった。GAAPベースの四半期純利益は前年同期比43%増、3Q比12.4%増の 41億600万ドルであった。
4Qの生産台数は前年同期比43.8%増、3Q比20.2%増の439,701台であった。販売台数は前年同期比31.3%増、3Q比17.9%増の405,278台であった。「モデルS/X」「モデル3/Y」の出荷台数内訳は「モデルS/X」が20,613台、「モデル3/Y」が41万9,088台と量販車がけん引した。
テスラはカリフォルニア州フリーモント、中国上海、テキサス州オースティン、ドイツのベルリンにギガファクトリーがあるが、全工場において過去最高の生産台数を記録した。テスラでは生産コストを下げるために生産から納車までの期間を短縮するような施策を取っているが、2Qでは74%の車両が3か月目に納車であったが、この比率は3Qでは64%、4Qでは51%まで低下した。
オースティン工場では「モデルY」を製造しているが、4Q末には週に3,000台以上生産できるようになった。インハウスで生産している4680バッテリー・セルの製造個数は週に1,000個以上生産するようになった。EVトラックの「Semi」のパイロット生産を4Qに開始し、納車は2022年12月であった。中国ではゼロコロナ解除は12月であったが、コロナによる工場閉鎖、物流の遅れ等の問題はあったが、上海工場はフル稼働に近い状態で生産し、これ以上生産能力を上げる予定はなく、変わらず北米以外の地域へ輸出するメイン・ハブである。ベルリン工場では「モデルY」を製造しているが、4Q末には週に3,000台以上生産できるようになった。またベルリン工場ではシルバーとチェリー・レッドの2色のペイントを開始した。
蓄電池事業の4Qの配備量は前年同期比152%増の2.5GWhと過去最高を記録し、2022年の蓄電池事業の総配備量は6.5GWhと過去の配備量を遥かに超えた。太陽光発電事業の4Qの設置量は同18%増の100MW、2022年通期の設置量は348MWとなった。太陽光発電及び蓄電事業の4Qのセグメント売上高は同90.4%増の13億1,000万ドル、売上原価は同55.8%増の11億5,100万ドルとなり粗利益は1億5,900万ドル、粗利益率は12.1%となった。粗利益率は3Q比2.8pt改善した。
4Qのフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー引く設備投資)は前年同期比▲48.8%の14億2,000万ドルとなった。現預金及び短期有価証券の4Q末時点の残高は同25.3%増の221億8,500万ドルとなった。4Q末時点の総負債額(車両とエネルギーのプロダクト・ファイナンスを除く)は同96.8%減の4,400万ドルまで低下した。4Q末の負債資本倍率は0.00098倍と限りなくゼロに近くなった。
業績推移
Tesla | Q4-2021 | 2021 | Q1-2022 | Q2-2022 | Q3-2022 | Q4-2022 |
(単位:百万 USD) | ||||||
自動車事業売上 | 15,967 | 47,232 | 16,861 | 14,602 | 18,692 | 21,307 |
うち排出権クレジット売上 | 314 | 1465 | 679 | 344 | 286 | 467 |
発電、畜電事業売上 | 688 | 2,789 | 616 | 866 | 1,117 | 1,310 |
サービス、その他売上 | 1,064 | 3,802 | 1,279 | 1,466 | 1,645 | 1,701 |
総売上高 | 17,719 | 53,823 | 18,756 | 16,934 | 21,454 | 24,318 |
総売上原価 | 12,872 | 40,217 | 13,296 | 12,700 | 16,072 | 18,541 |
自動車事業売上原価 | 11,085 | 33,393 | 11,322 | 10,521 | 13,480 | 15,785 |
発電、蓄電事業売上原価 | 739 | 2,918 | 688 | 769 | 1,013 | 1,151 |
サービス、その他売上原価 | 1,048 | 3,906 | 1,286 | 1,410 | 1,579 | 1,605 |
総粗利益 | 4,847 | 13,606 | 5,460 | 4,234 | 5,382 | 5,777 |
自動車事業粗利益 | 4,882 | 13,839 | 5,539 | 4,081 | 5,212 | 5,522 |
自動車事業粗利益率 | 30.6% | 29.3% | 32.9% | 27.9% | 27.9% | 25.9% |
発電、蓄電事業粗利益 | ▲ 51 | ▲ 129 | ▲ 72 | 97 | 104 | 159 |
サービス、その他粗利益 | 16 | ▲ 104 | ▲ 7 | 56 | 66 | 96 |
粗利益率 | 27.4% | 25.3% | 29.1% | 25.0% | 25.1% | 23.8% |
営業費用 | 2,234 | 7,083 | 1,857 | 1,770 | 1,694 | 1,876 |
営業費用比率 | 12.6% | 13.2% | 9.9% | 10.5% | 7.9% | 7.7% |
営業利益 | 2,613 | 6,523 | 3,603 | 2,464 | 3,688 | 3,901 |
営業利益率 | 14.7% | 12.1% | 19.2% | 14.6% | 17.2% | 16.0% |
受取利息 | 25 | 56 | 28 | 26 | 86 | 157 |
支払利息 | (71) | (371) | (61) | (44) | (53) | (33) |
営業外収益 | 68 | 135 | 56 | 28 | (85) | (42) |
税引前利益 | 2,635 | 6,343 | 3,626 | 2,474 | 3,636 | 3,983 |
法人税等 | 292 | 699 | 346 | 205 | 305 | 276 |
純利益 | 2,343 | 5,644 | 3,280 | 2,269 | 3,331 | 3,707 |
非支配株主に帰属する純利益 | 22 | 125 | ▲ 38 | 10 | 39 | 20 |
親会社株主に帰属する純利益 | 2,321 | 5,519 | 3,318 | 2,259 | 3,292 | 3,687 |
完全希薄後株式数 | 1,135 | - | 1,157 | 1,155 | 3,468 | 3,471 |
完全希薄後EPS | 2.04 | - | 2.86 | 1.95 | 0.95 | 1.07 |
修正EBITDA* | 4,090 | 11,621 | 5,023 | 3,791 | 4,968 | 5,309 |
修正EBITDAマージン | 23.1% | 21.6% | 26.8% | 22.4% | 23.2% | 21.8% |
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬 | ||||||
営業キャッシュフロー | 4,585 | 11,497 | 3,995 | 2,351 | 5,100 | 3,278 |
設備投資額 | 1,810 | 6,482 | 1,767 | 1,730 | 1,803 | 1,858 |
フリーキャッシュフロー | 2,775 | 5,015 | 2,228 | 621 | 3,297 | 1,420 |
現金および現金同等物 | 17,707 | 18,013 | 17,576 | 18,915 | 21,107 | 22,185 |
(注:テスラ社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
業績予想
FY2023予想 | 1Q(予想) | 2Q(予想) | 3Q(予想) | 4Q(予想) |
売上高 | 24,570 | 22,522 | 27,890 | 31,857 |
営業利益 | 3,882 | 3,491 | 4,351 | 4,970 |
税引前利益 | 3,937 | 3,506 | 4,411 | 4,991 |
法人税等 | 433 | 421 | 573 | 599 |
純利益(親会社株主帰属) | 3,504 | 3,085 | 3,837 | 4,392 |
完全希薄後株式数 | 3,430 | 3,375 | 3,300 | 3,250 |
完全希薄後EPS | 1.02 | 0.91 | 1.16 | 1.35 |
(注:テスラ社決算資料に基づき株式会社pafin作成)
投資判断
販売台数を前年比50%増目標としていたが、6%程未達であった。高インフレの欧米市場では値上げをしたが、中国市場では2022年に5回の値下げを行った。中国市場ではEV大手のBYDの台頭で競争が激化している。またグローバルベースでテスラの受注残が2022年7月以降ずっと減っていると推定している情報もあり、成長が鈍化したのかを見極める必要がある。営業利益率に関しては値下げにより下落傾向にあり、その分台数を売る戦略を取っているようだ。
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