本州はまだ梅雨明け前であり、連日危険な程の猛暑日が続いていたが、7月10日過ぎからやっと梅雨らしい気候となった。今年は日本全国、また全世界的な猛暑が予想されている。猛暑による労働生産性の低下やエネルギーコストの上昇等経済へのマイナス効果が近年では論じられている。しかし、個別企業レベルでは猛暑で恩恵を受ける企業はあり、そういった銘柄をこのレポートでは紹介したいと思う。

目次

  1. 猛暑で秋の訪れが遅くなる予報
  2. 猛暑で冷却需要が増加
  3. 上値が期待できると思われる7銘柄

猛暑で秋の訪れが遅くなる予報

7月第二週の梅雨明け前時点で連日35度以上の猛暑日が続き、場所によっては観測史上最高気温を記録と猛烈な暑さが続いていたが、7月10日以降梅雨らしく連日雨の日が続いている。気象庁の三か月予報によると今夏は猛暑が予想され、8~10月はラニーニャ現象(ラニーニャ現象とは太平洋東部の海水温が著しく低下する現象のことで、同海域の水温が上昇するエルニーニョ現象とセットで考えられている自然現象)が発生する可能性が高くなり、秋の訪れが遅くなるのではと言われている。

猛暑で冷却需要が増加

この猛暑により人々の冷却需要が急増し、熱中症対策が必須となりそれにより恩恵を受ける企業がある。すぐに思いつくのはアイスクリームや飲料を作っている企業であるが、他にエアコンを作っている企業、製氷機や日傘を作っている企業等様々な企業がある。

上値が期待できると思われる7銘柄

今期の会社の計画、株価バリュエーション、株価チャート等を基にまだ上値が期待できると思われる7銘柄をとりあげたいと思う。

①アイスコ(7698)

②井村屋グループ(2209)

③森永乳業(2264)

④ダイキン工業(6367)

⑤ホシザキ(6465)

⑥ムーンバット(8115)

⑦山善(8051)

なお、株価とバリュエーションの数字は2024/7/16の終値ベースで計算している。

①アイスコ(7698)

企業概要:アイスクリームや冷凍食品を専門とする食品商社。南関東・東海地方に営業所を持ち、倉庫での商品管理から物流まで一貫して取り扱っている。 神奈川県を中心に「スーパー生鮮館TAIGA」の名でスーパーマーケット事業も行っている。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
3,240円63億円20.5%9.3%4.7%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
17.8倍1.8倍8.2倍0.3倍1.17%

直近状況:2024年3月期の業績は燃料費のコスト上昇分に対する価格転嫁が進み猛暑が続いた事で売上高は前期比12.5%増の505億円、売上総利益は同10.9%増の87億円であった。フローズン事業のサテライト拠点を2拠点新設する等の物流効率の改善に努めた結果営業利益は同285.9%増の4億5,200万円、当期純利益は同120.9%増の3億1,800万円であった。なおフローズン事業売上4億4,218万円のうち58.4%は冷凍食品、39.7%はアイスクリームの売上であった。今通期の会社計画は売上高が前期比6.9%増の540億円、営業利益が同10.5%増の5億円、当期純利益が同11.3%増の3億5,500万円の予定である。

②井村屋グループ(2209)

企業概要:菓子メーカーの井村屋を傘下に持つ持株会社。あずきバー等の冷菓、中華まん、天心、羊羹、日本酒事業等に従事。アメリカンパイとチーズケーキのスイーツブランド「アンナミラーズ」や南仏プロヴァンスのパティスリー「ラ・メゾン・ジュヴォー」、高級アイスクリーム店「和涼菓堂」の運営などを行っている。中国、アメリカ、マレーシアに進出しており、海外売上高は全売上の約10%である。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
2,539円332億円55.1%9.2%6.0%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
17.9倍1.6倍7.9倍2.5倍1.22%

直近状況:2024年3月期の業績は原材料価格、物流費用が高騰する中一部商品の価格改定を行うと共にコスト削減を行った。2024年3月期時点で冷菓は全売上の32.3%であった。売上高は前期比7.9%増の482億円、営業利益は同27.3%増の25億円、営業利益率は同0.8pt上昇の5.3%、当期純利益は同19.8%増の19億円と売上、各利益段階全てで最高を達成した。今通期の会社計画は売上高が前期比2.6%増の495億円、営業利益が同2.5%増の26億円、当期純利益は▲4.2%の18.5億円の予定である。

③森永乳業(2264)

企業概要:国内乳業メーカー二位。森永製菓と兄弟会社。乳飲料やヨーグルトをはじめ、アイスクリームやデザート商品、栄養食品などを手がける。中でも、チルド飲料の「マウントレーニア」シリーズは、1993年(平成5年)に発売されたチルドカップコーヒーの元祖と言える存在であり、チルドコーヒー市場のシェアNo.1である。主力製品の「アロエヨーグルト」は累計50億個以上を販売。「ピノ」「パルム」の海外輸出も好調である。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
3,451円2,995億円49%22.1%0.2%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
15.8倍1.1倍5.9倍1.9倍2.6%

直近状況:2024年3月期は国内は増収増益、海外は増収減益、全体で増収増益であった。国内は幅広いカテゴリー、商品で価格改定を実施した。売上高は前期比4.1%増の5,471億円、営業利益は同16.3%の278億円、東京工場跡地売却により657億円計上した事により当期純利益は同263.3%増の613億円となった。今通期の会社計画は売上高が前期比4.2%増の5,700億円、営業利益は同7.8%増の300億円、当期純利益は前期の特別利益の剥落のために同▲69%の190億円の予定である。

④ダイキン工業(6367)

企業概要:エアコン世界首位、フッ素化学製品世界二位、換気事業やフィルター事業も世界首位。海外売上比率は約8割。2024年3月期時点の営業利益ベースでの事業貢献はエアコン事業が85%、化学事業13%、その他事業2%であった。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
22,725円6.65兆円54%9.9%7.7%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
24.9倍2.5倍10.5倍14.1倍1.4%

直近状況:2024年3月期は売上、各利益段階全てで過去最高を記録した好決算であった。売上高は前期比10.4%増の4兆3,953億円、営業利益は同4%増の3,921億円、営業利益率は同▲0.6ptの8.9%であった。為替の影響は売上高に前期比+2,085億円、営業利益で同+190億円であった。ダイキン工業ではカーボンニュートラルやエネルギーソリューションを切り口とした商品・サービスの提案強化、戦略的売価施策、トータルコストダウンの徹底により需要のマイナス影響を極小化し過去最高益を達成した。空調事業に関しては中南米、中近東の伸びが大きかった。今通期の会社計画は売上高が前期比3.3%増の4兆5,400億円、営業利益は同8.4%増の4,250億円、当期純利益は同2.6%増の2,670億円の予定である。

⑤ホシザキ(6465)

企業概要:全自動製氷機を中心に厨房機器を製造・販売している日本の業務用厨房機器メーカーである。全自動製氷機(マーケットシェア70%)、業務用冷蔵庫(マーケットシェア50%)、ビールサーバー(マーケットシェア75%)等。アメリカ、中南米、欧州、オセアニア、中国、アジアで事業展開している。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
4,909円7,112億円68%9.6%8.2%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
21.55倍2.1倍8.6倍1.2倍1.94%

直近状況:2023年12月期通期で五期ぶりの最高益を達成した後2024年12月期1Qも1Qとして最高益を達成した。売上高は前年同期比16.4%増の1,63億円、営業利益は同29.1%増の152億円、営業利益率は同1.3pt上昇の14.3%、四半期純利益は同5.7%増の97億円であった。国内はインバウンド特需、海外は米州のディスペンサー事業、インド事業が好調であった。今通期の会社計画は売上高が前期比9.8%増の4,100億円、営業利益が同1.1%増の440億円、当期純利益が同0.5%増の330億円と最高益を更新の予定である。

⑥ムーンバット(8115)

企業概要:傘、帽子、ショール、マフラー等のファッション雑貨の製造販売企業。晴雨兼用傘、新たに男性用日傘が好調である。製品の輸出もしている。2020年より構造改革を行っており、成長領域である専門店販路の拡大、EC、直販店等を展開しており、2023年4月期は4期ぶりの黒字を計上した。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
937円43億円51.2%10.8%7.6%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
12.2倍0.8倍9.5倍0.2倍3.4%

直近状況:2024年3月期は売上高は前期比10.7%増の106億円、営業利益は同281.3%増の4億4,300万円、営業利益率は同2.9pt上昇の4.1%、当期純利益は同287.9%増の5億4,500万円であった。今通期の会社計画は売上高が前期比8.4%増の115億円、営業利益は同3.5%増の4億5,000万円、当期純利益は同▲35.8%の3億5,000万円の予定である。

⑦山善(8051)

企業概要:工作機械、産業用機器、一般建材、家庭用機器等を取り扱う大手専門商社。猛暑対策商品としてこの夏は“電気代ゼロ円”のコンパクトクーラー&扇風機、身体をダイレクトに冷やす水冷服、製造現場の強い味方移動式大風量スポットクーラーのプロモーションを積極的にしている。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
1,469円1,305億円44.6%4.9%4.2%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
17.2倍1.0倍3.9倍▲0.8倍3.47%

直近状況:2024年3月期は国内外の設備投資の回復の遅れによる売上への影響と成長投資の加速による減価償却費の増加等により減収減益であった。売上高は前期比▲3.9%の5,069億円、営業利益は同▲40.3%の99億円、営業利益率は同1.1pt低下の2.0%、当期純利益は同▲48.2%の65億円であった。今通期の会社計画は売上高が前期比4.6%増の5,300億円、営業利益は同21.4%増の120億円、当期純利益は同17.1%増の76億円の予定である。