今年も上半期は終了し、早くも下半期に突入した。下半期のテンバガーを達成する銘柄を探すのに1986年以来の円安水準という事から輸出銘柄の割安銘柄から探してみたいと思う。

目次

  1. 年初は円高傾向の予想が多かった
  2. 円安継続か?
  3. 割安輸出銘柄のテンバガー候補5銘柄

年初は円高傾向の予想が多かった

年初の見方だと今年は年半ばにアメリカが金利を下げ、日米金利差の縮小から円高に向かうのではという見方が多かった。3月に日銀がマイナス金利を解除したものの円安傾向は変わらず、アメリカの金利は高止まりしている事等から円安が加速している。企業も今期の為替の想定では前期に比べて円高に見ている企業が多い印象があり、想定外の円安進行から海外売上比率が高い企業は業績の上方修正が予想される。

円安継続か?

6月26日のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が一時1ドル=160円80銭台まで下落し、1986年12月以来37年半ぶりの安値を付けた。対ユーロでは一時1ユーロ=171円80銭に下落した。7月1日発表の日銀短観では大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス13と前回3月調査のプラス11から改善した。短観で大企業製造業の景況感が2期ぶりに改善した事を受けて利上げ期待が高まり、債券は売られ10年債利回りは1.08%まで上昇した。しかし、同日のニューヨーク外国為替市場では1ドル161円70銭まで円安が進んだ。

日銀はGW中に10兆円規模の介入を行ったと言われているが、2か月弱しか持たなかった。アメリカは底堅い景気を受けてFRBは利下げを保留している。パウエルFRB議長は7月2日のECB主催の会合で「米国はディスインフレの道に戻ったものの、FRBは利下げに着手する前にインフレが鈍化しているとの確信を持ちたい。」と発言した。一方日本では7月30日、31日には日銀金融政策決定会合がある。短観の結果から利上げの期待はあるが、実質賃金が26か月連続低下している現状では利上げが個人消費を冷え込ませるリスクがあり、利上げは不透明である。また、6月の日銀金融政策決定会合で日銀による国債買い入れの減額方針を発表したが、国債買い入れの減額が小幅であるならば更に円安は進行するとの見方が優勢である。これらを併せて考えると円安は継続するのではとみている。

 

(チャート出所:ブルームバーグ 「止まらぬ円安、金融市場のFRB支配が鮮明に-日本に打つ手なく」

割安輸出銘柄のテンバガー候補5銘柄

下半期にテンバガー達成を狙える銘柄を選ぶにあたり円安のメリットを享受できる輸出比率が高く、割安で、かつ今期の想定為替レートから業績の上方修正をする確率が高そうに思われる銘柄を選ぶ事にする。なお、必ずしも日本から全て海外に輸出している企業だけでなく、海外現地生産拠点を持っている企業も対象とする。

上述の条件から以下のテンバガー候補5銘柄を選んだ。

 

①日立建機(6305)

②ヤマハ発動機(7272)

③TOYO TIRE(5105)

④レオン自動機(6272)

⑤日本特殊陶業(4762)

全銘柄の株価及びバリュエーションの数字は2024年7月3日の終値ベース。

①日立建機(6035)

企業概要:日立製作所の持分法適用会社の建設機械メーカー。国内2位、世界3位。1990年代後半から欧米、アジア、オセアニアに事業拡大。2022年8月に日立製作所が保有する日立建機の株式の約半数を日本産業パートナーズ、伊藤忠商事へ売却。IoT、研究開発、部品取引では日立グループとの連携を継続しつつ、新たなパートナーとは北米を始め様々な分野で連携。

海外売上比率:84%(2024年3月期時点)

今通期の想定為替レート:1USD=141.0円、1ユーロ=152.0円、対ドルで一円円安になると売上は+38億円、営業利益は+25億円、対ユーロで一円円安になると売上は+10億円、営業利益は+6億円と想定している。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
4,456円9,468億円41.6%12.2%8.4%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
9.7倍1.2倍6.1倍0.5倍3.93%

直近状況:2024年3月期は北米事業(総売上げの27%)の堅調、資材費の上昇を売価に転嫁し、売上高は前期比11.1%増の1兆4,059億円、営業利益は同23%増の1,682億円、営業利益率は同0.9pt上昇の11.6%、親会社株主に帰属する当期純利益は同32.9%増の933億円と過去最高益を達成した。今通期の会社計画は為替レートを1USD=141円、1ユーロ=152円想定で前期より円高になるとの前提で売上高が前期比▲2.6%の1兆3,700億円、営業利益が同▲1.8%の1,650億円、当期純利益は同5%増の980億円の計画である。

②ヤマハ発動機(7272)

企業概要:オートバイ世界第4位。船外機、ウォータービークルの販売台数世界一。トヨタと提携。2024年1月1日付けで1対3の株式分割を行った。2024年12月期よりIFRS(国際財務報告基準)へ移行。

海外売上比率:97.4%(2024年12月期1Q時点)

今通期の想定為替レート:1USD=140円、1ユーロ=150円、対ドルで一円円安になると営業利益は+16億円、対ユーロで一円円安になると営業利益は+11億円と想定している。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
1,527.5円1.5兆円40.5%14.5%8.9%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
8.6倍1.3倍6.3倍0.8倍3.27%

直近状況:2023年12月期通期決算結果は二輪車、マリン(船外機、ウォータービークル)の出荷増、また生産コスト増を売価に転嫁できた事により売上と営業利益で過去最高を記録した。しかし、金利スワップ評価損、為替差損益、投資有価証券評価損等の影響を受け当期純利益は減益であった。2023年12月期は事業構造改革の進捗としてパワープロダクツ事業の事業譲渡契約の締結、スノーモービル事業、プール事業の撤退を決定した。2024年12月期1Q決算は二輪車事業はプレミアムモデルの出荷増加により増収増益、営業利益率も改善した。一方マリンは減収減益、ロボティクスは低迷する中国市況に変化はなく減収減益であった。売上高は前年同期比5.9%増の6,421億円、営業利益は同2.7%増の780億円、営業利益率は同▲0.4pt低下の12.1%、四半期純利益は同12.7%増の560億円であった。会社計画の今通期の業績は売上高が前期比7.7%増の2兆6,000億円、営業利益が同6.6%増の2,600億円、当期純利益が同10.5%増の1,750億円である。

③TOYO TIRE (5105)

企業概要:タイヤ国内4位。北米での大口径SUV用タイヤに強み。自動車ゴム製品も。三菱商事が筆頭株主。

海外売上比率:80.5%(2024年12月期1Q時点)

今通期の想定為替レート:1USD=135円、1ユーロ=146円、対ドルで一円円安になると営業利益は+8億円、対ユーロで一円円安になると営業利益は+1億円と想定している。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
2,584円3,979億円63.5%17.2%10.4%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
8.8%0.95倍3.7倍▲2.8/倍4.06%

直近状況:2023年12月期は北米のタイヤの販売本数の伸長、重点商品の販促、為替メリットに加えて有価証券の売却等により売上、全ての利益段階で過去最高益を達成した。2024年12月期1Q決算はタイヤの販売本数が前年同期比減少した事により売上高は前年同期比▲1.2%の1,276億円となったが、営業利益は重点商品の販促、円安、海上輸送費の低下等で同78.2%増の260億円と1Qとして過去最高を達成した。営業利益率は同9.1pt上昇と大幅に改善し20.4%となった。営業外収益で為替差益の計上をし、四半期純利益は111.9%増の231億円と1Qとして過去最高を達成した。今通期の会社計画は売上高が前期比1.3%増の5,600億円、営業利益が同1.4%増の780億円、当期純利益は同▲37.7%の450億円を計画している。

④レオン自動機(6272)

企業概要:食品機械の製造企業。練り技術を基礎に食品成形機展開。包あん成形機や製パン機が主力。南北アメリカ、アジア(オセアニアを含む)、ヨーロッパ(中東、アフリカを含む)で事業展開している。アメリカでの製パン事業が育った。

海外売上比率:67%

今通期の想定為替レート:1USD=145円、1ユーロ=155円を想定している。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
1,683円452億円80.4%10.3%9.5%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
12.1倍1.3倍4.7倍0.7倍2.5%

直近状況:2024年3月期は食品加工製造機販売の日本国内、南北アメリカでは増収増益、ヨーロッパでは減収減益、アジアは中国の不振により減収減益であった。食品製造販売事業の南北アメリカではパイ、クロワッサン等の需要の増大が継続し、売上が増加、また商品価格の値上げ及び輸送コストの見直しにより増益、日本国内は売上は減少したが、高熱費が落ち着いた事や原材料の見直しにより利益が回復。総合的には最高益を達成した。売上高は前期比6.9%増の377億円、営業利益は同62.4%増の49億円、営業利益率は同4.5pt上昇の13%、当期純利益は同34.2%増の37億円であった。今通期の会社計画は売上高が前期比3.3%増の389億円、営業利益が同10.2%増の54億円、当期純利益が同2%増の38億円と最高益の更新を予定している。

⑤日本特殊陶業(5334)

企業概要:かつては日本ガイシの事業部の一部であったがスピンアウトした。スパークプラグ、車載用酸素センサー、超音波振動子、セラミック切削工具の世界シェアトップのメーカーであり、MPUオーガニックパッケージは世界三位である。半導体製造装置用のセラミックパッケージ等はAIチップ用にも使われている。

海外売上比率:85%(2024年3月期)

今通期の想定為替レート:1USD=140円、1ユーロ=150円

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
4,886円9,794億円65.4%13%8.9%
予想PERPBREV/EBITDAPEGレシオ配当利回り
11.8倍1.5倍5.8倍0.9倍3.4%

直近状況:2024年3月期は自動車関連事業は数量ベースでは前期並みであったが、インフレに対する価格転嫁により為替を除いても増収となり、一方セラミック事業は半導体需要の軟化や生産調整の影響を受け減収となったが、セラミックの減収分を自動車関連事業で相殺し、最高益を達成した。売上高は前期比9.2%増の6,145億円、営業利益は同20.6%増の1,076億円、営業利益率は同1.6pt上昇の17.5%、当期純利益は同24.7%増の826億円であった。今通期は自動車関連事業の好調維持に加えて半導体市況の回復によりセラミック事業も増収増益を予想している。今通期の会社計画は売上高が前期比4.6%増の6,430億円、営業利益が同6.9%増の1,150億円、当期純利益が同0.4%増の830億円と過去最高益の更新を予定している。