今回の注目投資トピックは「ソフトバンクG株、24年ぶり最高値 AI事業参入に評価」を取り上げてみたい。元記事はこちら。
日経の記事によると
2000年2月以来、24年ぶりに最高値を更新した。SBGは約9割の株式を保有する英半導体設計アームを中核に、人工知能(AI)分野の実業を主軸とする方針を示しており、新たな事業モデルを評価する海外投資家などから買いが集まった。四半世紀前のIT(情報技術)バブル時は最高値更新後に株価が低迷したが、当時とは様相が異なる。
直近の株高のけん引役となっているのが、半導体開発に必要な回路図を設計するアームだ。データセンターやAI向けの需要が拡大し、時価総額は23年9月の上場時の10兆円弱から約28兆円に大きく増加している。
SBGの株価が連日年初来高値を更新し、24年ぶりの最高値であるが、ひとえにアームのお陰である。SBGは2016年にアームの全株式を3兆3,000億円で買収した。当時は高値掴みだったのではないかとの批判が多かったが今から考えると良い買い物であった。
アーム、SBGそれぞれの株価、時価総額についてであるが、7月5日付のアームの日中取引の終値は181.19ドル、時価総額は1,898.58億ドル(約30兆4,912億円)だった。一方SBGの7月8日の前場場中の株価は11,550円、時価総額は16.93兆円である。
親会社であるSBGの時価総額よりも子会社のアームの時価総額は約1.8倍大きい。つまり理論的にはSBGの株式を購入する事により時価総額が1.8倍大きいアームを買えるだけでなく、SVF1、SVF2、LatAmファンド、Tモバイル、通信子会社のSBKK(9984)が無料で手に入るという状況にある。アームの株価バリュエーションは7月8日付の予想PERは120.48倍とエヌビディアの予想PER48.54倍の2.48倍と高くバブルな印象を受けるが、長期的な利益成長のポテンシャルを市場が評価している状況である。
アームの企業概要であるが、半導体設計と知的財産(IP)ライセンスを手掛けるイギリスのファブレス企業である。アームはCPU、GPUの設計、インターコネクト技術、システムIPの開発をしている。アームのCPUアーキテクチャはスマートフォン、タブレット、組み込みシステムなどの幅広いデバイスに採用されているが、モバイルデバイス市場で90%と圧倒的なマーケットシェアを持っている。GPU設計に関してはグラフィックス処理を担当し多くのモバイルシステムやエンターテイメントシステムに使用されている。
アームのエネルギー効率に優れたプロセッサー設計はAI及びIoTにおいて重要な役割を果たす事が期待されている。データセンターに関してはアームベースのプロセッサーがデータセンターにおいても採用され始めており今後の成長が見込まれる。また、自動運転等の新興分野にも進出している。
SBGはアーム以外にもAI関連企業にも投資しており注力しているが、SBGとアームの協業も大いに考えられる事だと思っている。アームのエネルギー効率の高いプロセッサー設計を活用し、ソフトバンクの通信インフラと連携する事でIoTディバイスの普及、IoTプラットフォームの開発、AIチップの開発、エッジコンピューティング向けのソリューション提供、5G対応のディバイスの開発、自動運転、車載エンターティンメント等様々な可能性が考えられる。
最後にエヌビディアの2.48倍の予想PERに関してであるが、エヌビディアの成長は既に実現しており、これからも成長余地はあるが、比較的に成長率が穏やかになる可能性がある一方、アームはモバイルディバイス市場での高い成長に加えてIoT、エッジコンピューティング、自動運転等複数の市場でのプレゼンスを持っている事からこれからの大きな利益成長が期待されていると考えられる。
以上アームの事業内容、SBGとの協業の可能性等について書いたが、SBGは新たな成長ステージに入った事は間違いなく、株価バリュエーション的にもまだPBR1.51倍と割安であり更に上値が期待できると考えている。