今回の注目トピックは数週間前の記事で恐縮だが、「キオクシア、近く東証へ予備申請 10月末上場の方針固める」を取り上げてみたい。元記事はこちら

ロイターの記事によると

[東京 26日 ロイター] - 半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスが、近く東京証券取引所に上場の予備申請をし、10月末の新規株式公開(IPO)を目指す方針を固めた。資金調達に向け上場の可能性を検討してきたが、半導体市況の回復で業績が急速に好転し、実現可能と判断した。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。
同関係者らによると、キオクシアは8月末に本申請し、10月末の上場を目指す。期日に間に合わせるため通常のIPOより急ピッチで準備を進めており、進ちょくによっては12月にずれ込む可能性がある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券と野村証券が東証への上場を支援している。
キオクシアは2017年に東芝から分離して発足した東芝メモリが前身で、米投資ファンドのベインキャピタルが主導する連合が18年に約2兆円で買収した。複数の関係者によると、ベインは上場を通じて保有株を一部売却し、資金を回収する。キオクシアは公募増資で資金調達し、半導体市場に追い風が吹く中で投資に充てる。
 

キオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)は主にNAND型フラッシュメモリやSSDを製造する半導体メーカーであるが、今年のIPOはベストタイミングだと思われる。WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)は6月4日に2024年春季半導体市場予測を発表した。2024年の半導体市場は前年比16%成長し、6,112億3,100万米ドル(約95兆3520億円、1米ドル=156円で換算)と初めて6,000億ドルを超えるとの事で前回予測(2023年秋季半導体市場予測)より成長率は2.9ポイント上方修正された。

WSTSによると引き続き世界的に旺盛なAI関連投資を背景にメモリーや一部ロジック製品の需要が急拡大している事が牽引しているとの見解である。IC(集積回路)の製品別予想ではメモリーは前年比+76.8%と昨年の▲28.9%から大きく回復が予想される。

キオクシアの2024年3月期の決算は売上高は前期比2,055億円減の1兆766億円、営業損益は同1,537億円減の▲2,527億円、純損益は同1,056億円減で▲2,437億円であった。二期連続の赤字で赤字幅は最大であった。通期では赤字であったが、NANDフラッシュメモリの市況回復、販売単価の上昇により増収、及び棚卸評価損の減少により4Qは6四半期ぶりの黒字決算であった。

今期は大幅なメモリー需要の回復が予想される中でのIPOで評価額にポジティブなインパクトがあると期待される。2020年にIPOの計画があったが、当時の半導体市況は厳しく延期された。2020年当時のIPO評価額のレンジは1株当たり2,800円~3,500円、レンジの上限で計算するとキオクシアの評価額は約1兆8,900億円であったが、この評価額を大幅に上回ると推測される。具体的な調達金額はまだ不明であるが、近年で最大のIPOになるのは確実である。

なお、NAND型フラッシュメモリは1980年代に東芝で発明されたものであるが、2023年時点ではサムスンがトップシェア(36.6%)を持っている。2017年に東芝が経営危機に瀕した際にWestern Digitalが出資してNAND型フラッシュメモリを生産するためにパートナーシップを結び三重県四日市工場で生産されている。二社合わせて2023年時点で27.1%のシェアを持っており、三位はSKハイニックスの21.6%であった。