今週の注目投資トピックは 「【佐川急便と対照的】赤字転落のヤマトHD、「安くて多い」アマゾン依存から脱却できず苦境が深まる袋小路 単価上がらず下請け業者も疲弊」元記事はこちら

以下、12月2日のマネーポストWEBの記事より抜粋引用。

日本の物流を担い、「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマトホールディングス(HD)が、赤字転落の苦境に喘いでいる。その背後では、世界最大のネット通販事業者であるアマゾンとの関係に緊張が走っている事情があるという。サービスを享受する利用者にとっても決して見過ごせない事態が表面化しつつある。

11月5日、ヤマトHDが発表した2024年度上期の連結決算は、売上高(営業収益)が前年同期比3%減の8404億円、営業損益は150億円の赤字に転落。2025年3月期の通期予想も見直され、営業収益、営業利益ともに4期連続で下方修正した。物流ジャーナリストの刈屋大輔氏(青山ロジスティクス総合研究所代表取締役)は次のように分析する。

11月5日、ヤマトHDが発表した2024年度上期の連結決算は、売上高(営業収益)が前年同期比3%減の8404億円、営業損益は150億円の赤字に転落。2025年3月期の通期予想も見直され、営業収益、営業利益ともに4期連続で下方修正した。物流ジャーナリストの刈屋大輔氏(青山ロジスティクス総合研究所代表取締役)は次のように分析する。

「アマゾンをはじめとする大口法人顧客との契約運賃の値上げ交渉が思うように進んでいないことが、業績悪化の原因になっていると考えられます。交渉がまとまらなかった場合、繁忙期となる年末の就労条件の悪化を招くことになれば、年明け以降の離職者増加にもつながりかねません」

ヤマトの配送ネットワークを支える拠点として全国に張り巡らされた「営業所」も大きな曲がり角を迎えている。

 2011年の東日本大震災の際には自衛隊に先んじてヤマトの配送トラックが被災地入りするなど、社会インフラとしての存在感を示す「顔」だった。だが、約3000か所の営業拠点の維持にかかる経費や18万人に上る従業員の人件費といった「固定費」が、同社の業績を圧迫する要因となっているとの指摘もある。

「ヤマトは『ネットワーク・オペレーション構造改革』の一環として営業拠点の統廃合を進めており、全国の営業拠点を2027年3月までに1800まで減らす方向です。その事業投資も、新たなコストとして決算状況に影響している」(刈屋氏)

 営業拠点の集約化は、各ドライバーの「配送エリア拡大」につながる。ヤマトの下請けで配送業務に従事する関東近郊のドライバーが言う。

「営業所の集約化は進んでいて、私の担当地域でも1か所閉鎖されました。その分、配送エリアが広がって、業務負担が増えています」

「アマゾンは近距離で大量の商品を届ける大都市部は自前の配送網を使い、地方や過疎地は全国に営業拠点を持つヤマトに任せています。ヤマトにとってアマゾンの配達は“安くて量が多い”うえ、輸送コストも高くなる。また個人事業主には運べない大型商品も多くて搬送が大変です」(同前)

 そうした実情がありながらこの数年、ヤマトは“アマゾン依存”から脱せずにきた。

「2017年の総量規制以降、ヤマトはアマゾンの荷物量も減らしましたが、2020年頃からヤマトが営業所などインフラを維持するため、“薄利多売”を覚悟してアマゾン側に荷物を増やしてもらいたいと要請した。低価格では受けないとアマゾンから事実上撤退した佐川急便とは対照的です」(刈屋氏)

 2021年には、ヤマトがアマゾン出店者向けの「割安配送サービス」を開始し、アマゾン側から「特別運賃に協力してくれたヤマトに感謝したい」と値下げへの謝意を示されたこともあった。

「ヤマトが引き受けるアマゾンの荷物量は再び増えましたが、低い単価では利益が上がらず、その結果、業績の下方修正が続いています」(同前)

 依存することで、苦境が深まる──このままではヤマトがアマゾンに呑み込まれてしまう可能性すらあるのだ。

 

宅配便最大手のヤマト(9064)が2025年3月期中間決算で営業損益が150億円の赤字に転落した。ヤマトの決算短信を見てみると2025年3月期1Q時点では売上総利益が既に10億円の赤字となっていた。宅配業の売上原価の内訳はドライバー等の人件費、運送費、物流センター運営費、委託費等であるが、営業所を全国3,000か所持っているために運営費がかなりかかっており、ガソリン代は高止まりの状況、また人手不足により配送を委託しているためにかなりの委託費がかかっている事から売上総利益の段階で赤字になったと推測される。2Qになり売上が増加した事から売上総利益は123億円の黒字に回復したが、中間決算(1Q、2Q累計)の営業損益は150億円の赤字となった。

この記事が指摘するようにヤマトが苦境に陥ったのはアマゾンの配送から撤退したSGホールディングス(9143)とは対照的にアマゾン依存で低単価で配送を引き受けている事と営業所の数が多すぎる事により利益レベルが佐川に比べて低いと推察される。佐川の粗利率を過去に渡って見てみると10%台をキープしている。一方ヤマトの粗利率は一桁台である。佐川は2013年4月にアマゾンの配送業務から撤退して以降、全国の営業所の数を約400に抑えて主に法人顧客向けの配送ネットワークを構築し、高い粗利率をキープしている。

ヤマトと佐川の戦略の違いはよく経済メディア等で取り上げられるが、ヤマトは個人顧客を主にサービスを展開しているが、営業所の数が佐川よりはるかに多く固定費が高いために利益が薄くなってしまうが、佐川は高単価の法人事業を主に手掛け、効率の良い配送ネットワークにより高収益体質を維持している。売上ではヤマトの方が佐川より数千億円高いが、純利益は佐川の方が高いために時価総額はヤマトが5,925億円、佐川が9,201億円と大きく差がついている。

ヤマトの業績回復の為には売上の多くを占めているアマゾンの配送単価の値上げと営業所の数を減らす事は必須であると思われる。アマゾンは長年インターナショナルで赤字であったが、プライム料金の値上げ等でインターナショナルでも黒字に転換しており、必要であればまた値上げする事も可能であり、ヤマトの値上げ要請に応じる事がお互いにとってウィンウィンになると考えている。