今週の注目投資トピックは「日本製鉄7日にも会見 米政府を提訴方針 USスチール買収阻止受け」元記事はこちら。
以下、1月6日の毎日新聞の記事より引用。
日本製鉄は6日、バイデン米大統領がUSスチール買収計画に中止命令を出したことを受け、7日にも記者会見することを明らかにした。日鉄は今回の判断に関し、適正な手続きが取られておらず法令違反だとして米政府を提訴する方針を示している。会見では対応について詳細を説明すると見られる。
バイデン氏は3日発表した声明で「国家安全保障上の懸念がある」と説明し、買収中止命令を出した。両社に30日以内に買収計画を完全かつ恒久的に破棄するよう求めた。
日鉄は2023年12月にUSスチールの買収を発表したが、直後に全米鉄鋼労働組合(USW)が反対を表明。その後の大統領選で、トランプ次期大統領が買収阻止を訴え、バイデン氏も実現に難色を示すなど政治問題化した。
買収計画は対米外国投資委員会(CFIUS)が国家安全保障上の問題がないかを調査していたが、委員の間で見解が割れたため、バイデン氏に判断を一任していた。
買収が実現すれば粗鋼生産量で世界3位の日米連合が誕生する予定だったが、中止命令により、日鉄は戦略の練り直しを迫られている。
やはり、日本製鉄によるUSスチールの買収はアメリカ政府により阻止された。日本製鉄はバイデン米大統領が命じた米鉄鋼大手USスチールの買収禁止措置に関して、明日会見するとの事である。この決断はいくら日本製鉄が訴訟を起こしても覆る事はないだろう。
今月20日に大統領に就任するトランプ氏はバイデン大統領よりも早く日本製鉄による買収について反対を表明していた。また2024年12月2日、トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」において、「かつて偉大で強力だったUSスチールが外国企業、今回の場合は日本製鉄に買収されることに全面的に反対する」と投稿し、買収を阻止する意向を明確にしている。
買収が失敗に終わる場合に日本製鉄はUSスチールに違約金5億6500万ドル(約890億円)を支払う義務が生じる可能性があると報じられているが、この買収が米政府の反対により失敗となっても日本製鉄に違約金支払い義務が生じるのかも疑問が生じる所である。
米政府を相手に日本製鉄が訴訟するという事に関してはコストと時間が莫大になる事以外にも株主価値を毀損する要素が多く得策であるとは思えない。訴訟の長期化による投資家心理の悪化、日本製鉄の既存のアメリカ国内での事業展開に不利益を被るリスクがある。また、日本製鉄の株主により株主訴訟を起こされるリスクについても日本製鉄は考慮する必要があるのではないだろうか。
日本製鉄はUSスチール買収に際してメガバンクから総額約1.6兆円(約160億ドル)の融資を確保している。この資金をもとに米国のように民間企業の買収が政治問題化しない国でかつ製鉄需要の高い成長が望める国に資金を投入した方が長期的に企業価値を高める事ができるのではないだろうか?
以下にUSスチールの代わりに考えられる投資先について説明する。
1. インド
- 理由:
インドは急速な経済成長、都市化の進行、インフラプロジェクトの拡大により、世界第2位の鉄鋼需要国として注目されている。 - 需要の特徴:
自動車産業、建設業、再生可能エネルギー施設向けの鋼材需要が高い。 - 日本製鉄の活動:
AM/NS India(アーセロールミタルとの合弁)を通じた投資やグジャラート州での新製鉄所計画など、すでに多くの投資を行っている。
2. インドネシア
- 理由:
東南アジア最大の経済規模を持ち、人口増加とインフラ整備により鉄鋼需要が急速に増加中。 - 需要の特徴:
港湾や鉄道、道路建設などの大型インフラプロジェクトに加え、自動車製造業やエネルギー関連施設の需要も成長中。 - 投資可能性:
クラカタウ・スチールとの協業や、工業団地(例: モロワリ)でのステンレス鋼生産への参加。
3. ベトナム
- 理由:
ASEAN諸国の中で急成長する製造業・建設業により、鉄鋼需要が増加中。 - 需要の特徴:
工業化の進展、輸出主導型経済に基づく製造業の発展。 - 投資可能性:
地場の鉄鋼メーカーや輸出産業向け鋼材供給の強化。
4. バングラデシュ
- 理由:
高い経済成長率とインフラ整備の進展。 - 需要の特徴:
大型建設プロジェクト(橋梁、港湾施設)、工場建設に伴う鋼材需要。 - 投資可能性:
鉄鋼需要の急拡大に対応するための新興市場開拓。
5. エジプト
- 理由:
中東およびアフリカ地域の経済ハブとしての役割が拡大。 - 需要の特徴:
大規模なインフラプロジェクト、特に新首都建設や交通網整備。 - 投資可能性:
中東およびアフリカ市場への輸出拠点としての活用。
6. フィリピン
- 理由:
ASEAN地域の建設需要が拡大中で、インフラ整備が急務。 - 需要の特徴:
空港、道路、港湾施設建設などに使用される鋼材の需要増。 - 投資可能性:
高品質な鉄鋼製品供給で市場シェアを拡大。
7. ケニア
- 理由:
アフリカでのインフラ開発が進行中。 - 需要の特徴:
鉄道、港湾、電力インフラに対する需要。 - 投資可能性:
アフリカの他地域への輸出拠点として活用。