今週の注目投資トピックは「「キティ」に続く多様なキャラ強み、サンリオ株は年初来で2.5倍に」元記事はこちら。
以下、12月8日のブルームバーグの記事より引用。
サンリオの株価が上場来高値を更新している。「ハローキティ」をはじめとする知的財産(IP)事業で収益を伸ばし、後に続くキャラクターも豊富だ。
株価は11月に入り最高値を付ける日が続いて年初来で2.5倍、東証株価指数(TOPIX)業種別で所属する卸売業指数では断トツで上昇率1位だ。創業者の辻信太郎氏から孫の辻朋邦氏に社長が交代した2020年7月以降では9倍弱になる。今期(25年3月期)営業利益予想は前期比52%増で過去最高を更新する。
キャラではキティが著名だが、総数が5700万票を超えた24年のサンリオキャラクター大賞では5位(1位は「シナモロール」)だった。実はキティが1位だったのは19年が最後で、以降は5位にも入れない年もある。このキティ以外の450種類ほどのキャラの多様性がサンリオの強みで、IP事業の裾野を広げている。
サンリオ株に21年から投資している英RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの舟木麻弥ポートフォリオ・マネジャーは20年の体制変更を評価、海外売上高比率が急上昇しているキティ以外のキャラについて「成長余地は大きい」と述べた。さらに物語と結び付くディズニーのキャラに対してサンリオは「汎用性が高く、他のIPとの共存も容易だ」と優位性を指摘した。
1974年デビューのキティは24年に50年を迎えた。50周年効果も追い風になってサンリオの収益は好調だ。25年には「マイメロディ」や「リトルツインスターズ(キキ&ララ)」が50年を迎える。この2キャラは大賞では6位と10位だった。キティには19年に発表されたハリウッド映画への期待も膨らむ。
IP展開
岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストはサンリオについて「任天堂が切り開いたIP多面展開ビジネスモデルを本格的に追随する段階に入った」と評価、成長余地は任天堂に匹敵するとしている。農林中金全共連アセットマネジメントの中尾真也ファンドマネジャーは「他のIPビジネス企業と比べて主人公級の魅力的で分かりやすいキャラクターを多数保有している点が強み」と指摘した。サンリオの今期売上高予想は1306億円と前期比で31%増加する。店舗やテーマパークでインバウンド(訪日外国人)を含めて顧客が増加、ライセンス事業も複数キャラ展開戦略が奏功して特に北米や中国でロイヤルティー売り上げが増えたとしている。
韓国NH投資証券の日本株アナリストであるキム・チェユン氏は、韓国アイドルや韓国で人気ブランドのアディダス、バレンシアガとの協業でサンリオの認知度が非常に上がったとして、韓国で引き続き高い実績を出す可能性が高いと予想した。
同時にリスク要因は「キャラのライセンス依存度が高いこと」として、グローバルマクロ的な要素が株価にネガティブな影響を及ぼす可能性がある点には要注意だとした。
「キティ」後
複数キャラ戦略が奏功して、物販・ライセンス事業の売上総利益に占めるキティの構成比率は前期で30%と10年前の76%から半分以下に低下した。キティに詳しい関西国際大学の清水美知子教授はサンリオについて「近年は推し活の広がりとともにキティ以外のキャラが大きく成長している」と語った。
22年7月からサンリオ株を保有し始めたアセットマネジメントOne海外消費関連日本株ファンド株式運用グループのファンドマネジャー吉澤朋哉氏は、サンリオは10-14年辺りまで増益だったが、キティブランド乱用と自社物販拡大という戦略を進める過程で在庫ロスなどが発生して14年以降はつまずいたと指摘した。今のサンリオはキティ以外にも収益源を広げている。
サンリオ株は11月27日、一時17%安と急落した。主要取引銀行や経営陣が保有する株式を売り出すと発表して需給悪化を懸念する動きが一気に強まった。それでも翌日には一時9%高となり、その後に急落の穴はすぐに埋まった。
今期予想株価収益率(PER)は向こう12カ月のブルームバーグ・コンセンサスで33倍、任天堂の29倍やTOPIXの15倍に比べてサンリオ株は割高だ。
農林中金全共連アセットの中尾氏はサンリオ株について、投資指標のマルチプル的には過去の水準を超えているとして「1株利益(EPS)の成長予測が難しい面もある」と指摘した。同時にIP事業の世界的普及ストーリーが崩れない限り、高いバリュエーションは許容されると評価した。このストーリーを維持するためには複数キャラの一層の活躍が不可欠だ。
サンリオ(8136)の業績が好調である。年初来の株価騰落率は140.9%と高い。
11月末に金融機関が保有する1,500億円規模のサンリオ株の売り出しを控えているために株価はここのところ下げ基調である。売り出し価格は12月10日から13日までのいずれかの日の終値から決める事になっている。
サンリオは2020年7月に創業者の辻信太朗氏の孫にあたる辻朋邦氏が当時31歳で社長に就任して以来株価は9倍になり、時価総額は1兆円を超えたが、新社長は具体的にどのような経営改革を行ったのかについて振り返りたい。
サンリオは以前は「キティ」売上の比率が極端に高かった。2014年3月期通期の海外売上484億円のうち93%が「キティ」のグッズ売上であった。海外ではブームというボラティリティに耐えられる基盤がなかった。新社長が就任した2021年3月期は営業損益は▲32億円に沈んだ。
新社長の元では「第二の創業」と銘打ち、以下の様な経営改革が行われた。
①キャラクターの多様化:キティの依存度を下げシナモロールやマイメロディ、クロミといったキャラクターを積極的に活用。また、新しいキャラクターを常に開発し、古いキャラクターに関しても時代に合うようにアップデートし、多様な層へのリーチを強化した。
②グローバル展開:海外市場でのライセンス契約やキャラクター展開を推進。特にアジア圏での人気を背景に、現地市場向けの商品やイベントを展開。
③デジタルシフトの推進:デジタルコンテンツの充実を図り、モバイルゲームやSNSを活用したプロモーションを強化。キャラクターを活用したモバイルゲーム、デジタルフィギュア、YouTubeなどの動画コンテンツの展開などが新たな収益源となった。
④コラボレーションの拡大:世界中のデザイナーやブランドと積極的にコラボレーションを行うようになった。最近の主なコラボレーションはインドのデザイナー、アニース・アローラ、アディダス、ストリートファッションブランドのUNDERCOVER、BEAMS COUTURE等。これらによりキャラクターの認知の拡大。
⑤ファンエクスペリエンスの向上:2024年のピューロランドの大規模リニューアルでは、新たなアトラクションやデジタル技術を活用した体験型コンテンツを導入し、来場者の満足度向上を図った。
⑥グッズ展開の強化:消費者の多様なニーズに対応するため、限定商品やカスタマイズ可能なアイテムを増やした。
これらの施策の結果サンリオの業績はV字回復し、2024年3月期通期は営業利益は過去最高の269億円を達成し、2025年3月期は国内のライセンス事業は複数キャラクター戦略により前年比14%増で推移、海外は北米/中国のライセンス事業が牽引し、前年比16%増で推移し最高益を更新予定である。
さて、この記事では株価バリュエーションの高さが指摘されている。本日12/9の終値ベースで予想PERは36倍と任天堂と同じレベルである。サンリオの強みはアニメやゲームを中心としたIPビジネスと違い「可愛い、kawaii」に特化している所であると考えている。アニメやゲーム等のヒットに左右される事なく普遍的で広く受け入れられる可愛いキャラクターに特化している為に長期的なブランド価値を保持しやすく、ライセンスビジネスは幅広い分野に展開しやすく安定している。この為に株価バリュエーションは多少のプレミアムがついても然るべきだと思われる。