今週の注目投資トピックは「ソニーG、米パラマウント買収見送り 経営戦略に合わず」を取り上げる。元記事はこちら

以下JIJI.COMより引用

ソニーグループ(G)の十時裕樹社長は7日、米メディア大手パラマウント・グローバルの買収を見送る考えを明らかにした。期待する資産と買収額が見合わないと判断した。ソニーGはこれまで買収提案したなどと報じられたが明言を避けていた。

十時社長は2024年4~6月期決算のオンライン説明会の席上、「パラマウントは大きい。全体を買収することは、リスクの観点からも経営資源の配分という観点からも『フィット』が良くない」と述べ、買収が経営戦略に合わないと強調した。

この発表は先週7日のソニーのオンライン決算説明会上で発表されたが、ポジティブな経営判断であったと思う。元々ソニーがパラマウントを買収する可能性については5月上旬に報道されていた。

パラマウント・グローバルについてであるが、ナスダック上場企業であり、前身はCBSコーポレーションとバイアコムである。傘下にCBSテレビ、MTV、幼児・児童向けアニメチャンネルのニッケルオデオンを持っている。ニッケルオデオンでは「スポンジ・ボブ」、「ザ・ペンギンズ from マダガスカル」等のIPを保有している。パラマウント・ピクチャーズで保有するIP(テレビ・シリーズを含む)は「スター・トレック」、「ミッション・インポッシブル」、「トランスフォーマー」、「トップガン」等。

買収案の内容はパラマウント株全株を260億ドル(約3兆8,220億円)で取得し、債務を引き継ぐという内容であった。債務を引き継ぐという事であれば、買収金額に債務金額が上乗せされるという事であり、直近の決算時(FY20242Q)の有利子負債は144.8億ドルであった。実質の買収金額は404.8億ドル(約5兆9,505億円)である。この金額はソニーの時価総額15兆円(8/9の終値ベース)の39.7%であった。

時価総額の40%近くの買収を経営戦略に合わないと判断した事は賢明であった。

以下私が考えるパラマウント・グローバルのリスクについて幾つかあげてみる。

①パラマウント・ピクチャーズは魅力的なIPを持っているが、CBSテレビ等のテレビ事業が視聴率低下により足を引っ張っており、テレビ事業の回復は難しい。

②パラマウント・グローバルの財務状態が悪い。負債資本倍率が86%と危険領域ではないが、負債レベルが高い。有利子負債は上述したように144.8億ドルであったが、2Qの支払い利息は2.15億ドル(約316億円)であった。年間の支払い利息はざっくり四倍と仮定して8.6億ドル(約1,264億円)となりソニーにとって負担になる。

③ソニーはソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントを保有しているが、映画事業は売上規模は大きいが巨額の広告宣伝費用を考えるとROIC(投下資本利益率)は他事業に比べて低い。ソニーの2024年3月期通期の映画事業のROICは5.9%であった。他事業のROICはG&NSが11.9%、音楽事業が11.9%、E&TSが19.8%、I&SSが8.3%であった。経営状態の悪いパラマウント・グローバルを買収したとしても映画事業のROICは更に低下する。事業ポートフォリオのバランスを考えて映画事業にそんなに大きく偏重すべきでない。