今週の注目投資トピックは「売り上げ100億円規模へ…JR東が新幹線で大口荷物輸送、物流課題の解決なるか」元記事はこちら。
以下、3月17日のニュースイッチ by 日刊工業新聞の記事より引用。
JR東日本は新幹線荷物輸送サービス「はこビュン」の大口定期輸送サービスと車両貸しサービスを4月18日に始める。東京―新青森間で客室を使用した車両貸し輸送を始めるほか、E3系1編成の全号車を荷物輸送専用車両に改造。2025年秋にも車両基地を活用し、盛岡―東京間で輸送を始める。はこビュンの本格的な事業化で年間100億円規模の売り上げを目指す。
はこビュンは鉄道ネットワークを活用した貨物輸送サービスで、JR東日本が21年に始めた。荷物1個から利用でき、列車出発30分前まで申し込み可能な「はこビュンQuick」のサービスはすでに実施している。
営業車両を活用した大口輸送サービスでは、毎週金曜日に新青森―東京間の上り列車で、定期運行を始める。1、2号車を荷物輸送の車両とし、3―10号車は通常通り旅客を乗せる。最大200箱程度の積載が可能で、100箱単位での大口輸送に対応する。
またE3系1編成を荷物輸送専用車両として改造。秋にも東北新幹線の盛岡―東京間の上り列車で、平日に定期運行を実施する。さらに車両基地を活用することで、100箱単位で最大1000箱程度の大口輸送を定期化する。改造は7両の座席を全て取り除き、床面をフラット化。E5系「やまびこ」と連結して、旅客と一緒に輸送する計画だ。
消費税込みの料金は40箱程度を積載できる1室貸しが6万1600円、車両貸しが1車両10万4500円から。今後、東北新幹線だけでなく、上越新幹線や北陸新幹線にもサービスを広げる考えだ。喜勢陽一社長は「これまでの実証実験的なサービスで10億円を超える収益があり、荷主とともに作っていけば100億円を十分に目指せる」と目標達成に自信を見せる。
新幹線輸送のメリットは速達性と定時性で、生鮮品や精密機器、医療用品などの輸送に親和性が高い。ここまでJR東日本では日本郵政グループや日本通運などと協力し、物流ネットワークを広げてきた。喜勢社長は「航空とも連携し、海外に輸送したい」と、東北、上越、北陸地方の特産品を新幹線を介し海外へ輸送する青写真も描く。
JR東日本では1日当たり4トンを新青森―東京間の約700キロメートル輸送する場合、新幹線輸送の活用によりドライバーの拘束時間を1年間累計で1万時間以上削減できると試算する。物流業界の人手不足という避けて通れない社会課題の解決策にはなり得るが、新幹線が物流システムとしてどこまで定着するのかがカギを握りそうだ。
JR東日本の新幹線荷物輸送サービス「はこビュン」の大口定期輸送サービスと車両貸しサービスは、日本の物流課題の解決に貢献しそうである。物流業界の課題はトラックドライバー不足、長距離輸送のコスト増加、CO2削減等の環境対策であるが、新幹線活用による物流はこれらの課題の解決になるのではないだろうか。
以下、「はこビュン」が課題解決に貢献できる点をあげていく。
①トラック輸送の負担軽減(ドライバー不足対策)
長距離輸送を新幹線で代替する事で、トラックドライバーの負担を軽減できる。
運送会社は短距離輸送に特化できるためにドライバーの労働環境改善にもつながる。
②即日輸送が可能になる。
新幹線だと東京~仙台間が1時間半など物流のリードタイムを大幅に短縮できる。
鮮度が重要な食品や医薬品の輸送に向いている。
③環境負荷の低減
新幹線はトラック輸送よりもCO2排出量が少ないために環境に優しい輸送手段として期待できる。
④車両貸しサービスで柔軟な物流対応が可能
荷主や物流企業が専用の新幹線車両を借りて自社専用の輸送便を設定できる。
特に繁忙期やイベント時の大量輸送にも対応しやすい。
今後、他の新幹線会社や鉄道会社も同様の取り組みを広げていけば、鉄道を活用した物流改革が期待できる。
JR東日本では「はこビュン」の本格事業化で売上100億円を目指すとの事だが、多額の投資を伴わない新規事業で、新たな事業の柱となる事が予想される。