今週の注目投資トピックは「営業益90%減…「一人負け」の日産、問われる構造改革の実効性」元記事はこちら

以下、11月11日のニュースイッチ by 日刊工業新聞の記事より引用。

日産自動車が業績悪化を受けて構造改革策を発表した。中国での新エネルギー車(NEV)台頭による販売減や、米国で拡大するハイブリッド車(HV)需要を取り込めていないことが背景としてある。ただ、外部要因だけでなく販売目標と実績の乖離(かいり)など日産固有の問題もある。日本の自動車業界で「一人負け」の様相を呈する中、構造改革の実効性が問われる。

「販売計画を達成できていないことが続いている。計画がストレッチし過ぎていた」。7日の会見で内田誠社長は自社の課題をこう指摘した。中国市場の環境悪化や競争激化など日本の自動車産業が苦戦する中、特に日産の苦戦が目立っている。

2024年4―9月期の世界販売台数は前年同期比1・6%減の159万6000台。中国が同5・4%減だったのに加え、日本が同2・4%減、北米も同1・0%減と他の主要地域も販売を落としている。「タイムリーに顧客のニーズを満たす商品を提供できていない」(内田社長)ことが背景にある。

これがインセンティブ(販売奨励金)の増加をもたらし、コスト増やインフレ影響が収益を圧迫。4―9月期連結決算で営業利益は同90・2%減の329億円に落ち込んだ。

足元の業績を受け、25年3月期連結業績予想も下方修正した。売上高を前回見通しから1兆3000億円減の12兆7000億円(前期比0・1%増)、営業利益を同3500億円減の1500億円(同73・6%減)とし、従来3000億円としていた当期利益の予想は取り下げて未定とした。世界販売台数の計画も同25万台引き下げ340万台(前期実績は344万2000台)にした。

日産は26年度末までに年間販売台数を23年度比100万台増やし、営業利益率を6%以上に引き上げる経営計画を24年度に始動したばかりだ。既に目標達成が難しい状況で、どう立て直せるのか。厳しい視線が同社に注がれている。

先週発表された日産自動車の中間決算であるが、自動車メーカーで一人負けであった。トヨタ、ホンダ、スズキ、マツダ、SUBARUが中間決算として最高益を更新した。日産の中間決算結果は売上高が前年同期比▲1.3%の5兆9,842億円、営業利益が同▲90.2%の329億円、純利益が同▲93.5%の192億円であった。通期の業績予想は二度目の下方修正で売上高は従前見通しより1兆3,000億円減の12兆7,000億円(前期比0.1%増)、営業利益は従前見通しより3,500億円減の1,500億円(同▲73.6%)、当期純利益に関しては未定とした。

同時にグローバルでの生産能力の20%削減、従業員の一割弱にあたる9,000人のリストラを発表した。

日産の業績悪化の要因であるが、いくつかあるが以下にあげると

①製品ラインナップの競争力不足:近年ではモデルの新規投入が遅れたり、他社と比較して目立つ車種が少なくなったため、競争力が低下した。

②北米市場での販売不振:北米ではハイブリッド車が人気であるが、日産は北米でハイブリッド車を販売していない。また、販売台数を維持するために販売奨励金を多用し、利益率を低下させた。

③高コスト構造:日産の製造拠点は国内6か所、海外はアメリカのミシシッピ州、テネシー州、メキシコ、イギリス、スペイン、中国、タイ、インド、ロシア、南アフリカ、ブラジル、インドネシア、エジプトにある。日産は需要に対して過剰な生産能力を抱える事が多く工場の稼働率が低かった。このために高コスト構造が続いていた。時系列で粗利率を見てみると日産は10%台と低く、トヨタは20%台半ばから後半、ホンダは20%台前半である。

④経営の不安定さ:ルノーとのアライアンス関係は継続しているが、ルノーは日産に対して43.4%の議決権付き株式を保有しており、日産の経営に強い影響力を持っている。一方、日産はルノーに対して15%の非議決権株式を保有しているため、経営に直接的な影響を与える力が限られている。ゴーン元会長の在任時には統一された戦略が推進されたが、ゴーン氏逮捕以降経営が不安定になっている。

⑤内部改革の遅れ:ゴーン氏時代の厳しいコスト削減策により、組織が硬直化し、士気の低下が見られるとの指摘もある。内部改革の遅れが、競争力の低下を招いている。

⑥企業価値向上の意識の欠如:トヨタやホンダは業績連動型報酬制度を取っている。役員が企業価値の向上を意識して経営にあたる事を目的としている。日産は業績不振が続いているのに役員報酬が高過ぎるとの批判もある。

日産の立て直しは簡単な事ではないが、少なくともルノーとの関係を見直し、独自の経営方針を持つことや、役員報酬制度を業績連動型に変えて経営責任の明確化は実施すべきである。製品の競争力強化、効率的な生産体制、組織改革など、多面的なアプローチが必要だと思われる。市場や消費者ニーズに的確に対応する経営の再構築が望まれる。