今週の注目投資トピックは「経営統合協議入りを発表へ ホンダ・日産、三菱合流も」 元記事はこちら

以下、12月23日の共同通信の記事より引用。

ホンダと日産自動車は23日、経営統合の本格的な協議に入ることを発表する。日産と企業連合を組む三菱自動車は年明けに遅れて合流を判断する。規模が大きいホンダと日産が先に話し合いを始め、世界3位となる巨大連合の枠組みを固める。持ち株会社を設立し、それぞれが傘下に入る方向だ。

 3社の社長は同日午前、統合協議入りを経済産業省と国土交通省に報告。同日午後に記者会見を開く。巨大連合の実現で国内の勢力はトヨタ自動車グループと二つに集約され、自動車産業には歴史的な岐路となる。3社のサプライチェーン(供給網)に影響が出そうだ。

 経営統合で海外新興メーカーが台頭する電気自動車(EV)の競争力を強化する。ホンダが日産にハイブリッド車(HV)を供給することなども検討し、幅広い分野で協業に踏み込む考えだ。

 日産は米国市場の販売不振で業績が悪化している。台湾の電子機器受託生産大手の鴻海精密工業は買収を提案し、フランス自動車大手ルノーが持つ日産株の取得を目指した交渉も進めている。

経営危機に陥った日産自動車とホンダの経営統合の話が最初に報じられたのは先週17日の日経新聞であったが、本格的に統合協議入りし、12月23日の午後に記者会見を開くとの事である。

ホンダ、日産自動車、三菱自動車の3社が経営統合した場合、2023年の世界販売台数の合計は約813万台となる。これは、トヨタグループ(約1,123万台)、フォルクスワーゲングループ(約923万台)に次ぐ規模であり、世界第3位の自動車メーカーグループとなる。

しかし、これを実現するのは系列の部品会社の問題、中国事業の問題等クリアすべき事が多い。部品会社の再編は不可避で部品会社は相当の犠牲を強いられる事になると思われる。読売新聞オンラインの12月21日の記事によると、

日本の自動車業界は完成車メーカーを頂点に親密な部品会社が連なるピラミッド型の多重構造を構築している。東京商工リサーチの12月の調査によると、販売先などを含めた取引先はホンダが1万5242社、三菱自を含む日産側が1万3283社とすそ野が広い。このうち約9000社は部品会社が大半の製造業だ。

 統合が実現した場合、部品を共通化すれば大量生産によって製造コストは低減し、量産効果を期待できる。ただ、両社は現状では同じ部品であっても「ケイレツ」と呼ばれる別々の親密先が製造しているケースが多い。統合効果を最大化するには、重複の解消は避けて通れない。

経営統合後はコスト削減のため、車両の部品共通化が進むことが予想される。その結果、既存の取引先で重複する部品の供給契約が見直され、選ばれない企業が排除される可能性がある。日産系列の部品会社とホンダ系列の部品会社が競争する形となり、優れた技術力やコスト競争力を持つ企業が選ばれる傾向が強まる。選ばれなかった企業は受注減少や撤退を余儀なくされ、倒産する可能性がある。選ばれない部品会社は相当な数になると推測されるが、統合会社のみで対応できる問題ではなく、経済産業省の中小企業庁が関わり公的な支援をする必要が生じると思われる。

また、もう一つの大きな問題は中国市場の問題である。12月23日のブルームバーグの記事でも指摘されているが、ホンダ、日産ともに中国市場では過剰生産能力の問題がある。中国は世界最大の自動車市場ではあるものの、政府の補助金で多くの企業がEV市場に参入し、中国では約200社のEVメーカーがあると言われている。需要を遥かに超えるEVの供給量で、価格を下げざるを得ず、実際に中国市場で利益を出せているのはマーケット・リーダーであり、ブランド力があるBYDとテスラ位のようである。

中国での日産の生産能力は年間160万台であったが、2024年6月に江蘇省常州市の常州工場(年間生産能力:約13万台)を閉鎖したため、現在の生産能力は約147万台と推定される。今期の日産の中国での販売予定台数は69万台の予定である。余剰となった生産能力を活用するため、日産の中国合弁会社である東風日産は、東風汽車集団の子会社である嵐図汽車(ボヤー)の新型EV「知音(ジーイン)」の受託生産を開始している。受託生産をどの位の数量で行っているのかは不明であるが、大幅な赤字であると推測される。

ホンダは中国における四輪車の生産能力を再編している。2024年7月時点で、ガソリン車を中心に年間生産能力を29万台削減し、149万台から120万台に縮小する計画を発表した。具体的には、広汽ホンダの第4工場(生産能力:5万台)を2024年10月に閉鎖し、東風ホンダの第3工場(生産能力:24万台)を同年11月に稼働休止とする予定であった。一方で、電気自動車(EV)市場への対応として、東風ホンダは2024年10月に新エネルギー車工場を稼働開始した。この工場の年間生産能力は約12万台で、EV専用の生産ラインを備えている。ホンダの中国での生産能力の再編後の生産能力はガソリン・ハイブリッド車が年間120万台、EVは年間12万台の計画である。120万台となる生産能力は販売のペースに対して過剰で、さらなる削減を前提にパートナー企業などと協議を進めているとしていた。

中国市場では日産やホンダのみならず、外国メーカーは皆苦戦している。フォルクスワーゲンは2024年11月27日に中国の新疆ウイグル自治区にある合弁事業の工場と試験走行コースを中国企業に売却することで合意し、ウイグル自治区の事業から完全撤退した。ゼネラル・モーターズも中国での工場閉鎖や事業再編などに伴い50億ドル(約7700億円)を超える費用・評価損が発生する見通しだと今月発表した。日産、ホンダも中国での生産能力は大幅に削減する必要がある。