今週の注目投資トピックは「米ベインに優先交渉権 ヨーカ堂売却で、セブン&アイ」元記事はこちら

以下、2月22日の日経電子版の記事より引用。

セブン&アイ・ホールディングスが、傘下のスーパー、イトーヨーカ堂などを束ねる中間持ち株会社ヨーク・ホールディングス(HD)の株式売却について、米投資ファンドのベインキャピタルに優先交渉権を与える方針を決めたことが22日、分かった。ベインはヨークHDの企業価値に関して、7000億円以上を提示したとみられる。セブン&アイは今後、出資比率などについてベインと詰めの協議に入る。

 ヨークHDの売却先を巡っては、ベインと米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、日本産業パートナーズ(JIP)の国内外のファンド3社が1次入札を通過。セブン&アイは22日までに臨時取締役会を開き、提示されたヨークHDの企業価値や成長戦略などを踏まえ、ベインに優先交渉権を付与することを決めた。

 ベインは、ヨーカ堂などの集客力を高めるため、店舗の改装実績のある不動産大手ヒューリックなどと連携を模索する可能性もある。

 ヨークHDは昨年10月に設立され、ヨーカ堂のほか、雑貨店ロフトやベビー用品店の赤ちゃん本舗、ファミリーレストラン「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムズなど31社を統括する。セブン&アイは保有するヨークHD株の過半を売却して、2026年2月までに持ち分法適用会社化し、コンビニ事業に経営資源を集中する方針だ。

セブン&アイのうち、収益性が低いスーパーマーケット事業が投資ファンドのベインキャピタルに売却される事になりそうである。ベインキャピタルはイトーヨーカ堂、ヨークベニマルを束ねる中間持株会社のヨークホールディングスの企業価値に関して7,000億円以上を提示したとの事である。

まず売却提案価格の7,000億円に関してであるが、小売業のEV/EBITDA倍率が平均で6~8倍。IR資料によると2024年2月期のイトーヨーカ堂のEBITDAは168億円、ヨークベニマルのEBITDAは288億円で合わせて456億円であった。EBITDA倍率を7倍と仮定するとヨークホールディングスの事業価値は3,192億円。これにヨークホールディングスは不動産を沢山保有しているという事で含み資産も相当な価値になっていると推測され、不動産価値に再建後の収益力も加味した買収価格で7,000億円超という事なのだろう。

ベインキャピタルによる買収が成立すれば、セブン&アイにとってヨークホールディングスは持分法適用会社になりコンビニ事業に経営資源を集中する事になる。

ところでベインキャピタルであるが、外資系プライベートエクイティファンドで日本市場で一番アクティブな印象がある。今までどのような企業に投資してきたのか時系列で主な案件を以下に記す。

2009年12月 コールセンターのベルシステム24を1,000億円で買収

2015年2月   温浴施設の温浴施設チェーンの大江戸温泉物語を負債込みで約500億円で買収             (2022年に大江戸温泉物語は米ファンドのローンスターに売却)

2015年2月   きのこ栽培業者の雪国まいたけをTOB(2020年雪国まいたけは再上場)

2017年12月 大手広告代理店アサツー・DKを約1,500億円でTOB

2018年6月    東芝メモリ(現キオクシア)を約2兆円で買収、2024年12月キオクシア上場

2023年12月  製造業向け人材派遣のアウトソーシングを創業者と共にMOB(2,000億円超)

先日は富士ソフトの買収合戦より撤退、そして今回はヨークホールディングスの買収が報じられたが、2024年6月時点でベインキャピタルは今後5年間で日本市場に5兆円を投資すると報じられており、これからも積極的に日本企業を買収する事が予想される。