今週の注目投資トピックは「キオクシア、10月上場見送り 目標の時価総額に届かず」を取り上げたい。元記事はこちら。
以下、9月24日のロイターの記事より引用
[東京 24日 ロイター] - 半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスが、10月中を予定していた新規株式公開(IPO)の見送りを決めたことが分かった。関係者3人が明らかにした。うち2人によると、世界的に半導体株が調整する中、上場時に目指していた時価総額1.5兆円に届かないと判断した。
キオクシアは8月に東京証券取引所へ上場を申請しており、関係者らによると、週内に承認が下りることを見込んでいた。実現すれば日本で今年最大のIPOになるとみられていた。
合計で5割以上の株式を持つ米投資会社ベインキャピタルはロイターの取材にコメントを控えた。キオクシアは「適切な時期の上場を目指して準備を進めている」とした。
株式売り出しの想定価格を決めるに当たり、比較対象としていた企業の株価が調整していることが要因の1つ。前出の関係者2人によると、ベインキャピタルが目指していた価格に対し、投資家の評価はこれを下回っていた。
調査会社トレンドフォースによると、キオクシアはデータ記憶用のNAND型フラッシュメモリーで世界3位。競合の米マイクロン・テクノロジー(MU.O), opens new tabや韓国サムスン電子(005930.KS), opens new tab、SKハイニックス(000660.KS), opens new tabの株価は直近の高値から3─4割下落している。
近年で最大のIPOになると期待されていたキオクシアホールディングスだが、10月のIPOを延期するとの記事である。他のメディアの記事によると年内IPOの可能性もとの事であるが、どうなるか気になるニュースである。
2024年の半導体市場はWSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)の予測によると前年比16%増の6,112億ドルと初の6,000億ドル超えの市場規模になるとの事で6月末にキオクシアのIPOのニュースが流れた時点ではタイミング的に良いように思われた。しかし、2024年7月17日に、アメリカ政府が対中半導体規制をさらに厳しくすることを検討しているとの報道があり、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は6.8%の大幅下落を記録し、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)などの大手半導体関連株も軒並み下落し、以降半導体関連株は不安定な動きを見せている。
NAND型フラッシュメモリーの市場シェアトップのサムスン電子の株価は7月11日につけた高値の87,600ウォンから28%下落、SKハイニックスは7月10日につけた高値の239,000ウォンから31.6%下落、マイクロン・テクノロジーは7月10日につけた高値の137.29ドルから31%下落している。
半導体株の調整局面でのIPOになるとキオクシアの株価がベインキャピタルが望んでいた価格を下回ってしまうために延期はやむを得ないと思われる。キオクシアの2025年3月期1Q決算は売上高が過去最高の4,285億円、営業利益は黒字転換し1,259億円、四半期純損益も黒字転換し698億円となった。フラッシュメモリの需給バランスはスマホ向け需要に牽引されて改善しており、販売単価も上昇しているために2Q以降の業績も期待できると考えている。
NAND型フラッシュメモリ市場も回復しているが、半導体市場全体ではWSTSの予測によると2025年は2024年比12.5%増の6,874億ドルになると言われており二年連続の二桁成長が予想されている。短期的には半導体関連株は調整局面にあっても長期的な成長性の高さは変わらず、より良い市場環境でのキオクシアのIPOが期待される。