今週の注目投資トピックは「セブン&アイに買収提案 カナダ大手から、特別委で検討」を取り上げてみたい。元記事はこちら

以下8月20日の時事ドットコムニュースより引用

セブン&アイ・ホールディングスは19日、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたことを明らかにした。セブン&アイは提案内容を精査するため、既に社外取締役のみで構成する特別委員会を設置。受け入れるかどうかを「速やかに検討し、返答する予定」としている。

仮にグループ全体の買収が実現した場合、買収額は少なくとも5兆円を超える見通し。世界的な巨大小売りグループが誕生する可能性がある。

アリマンタシォンはカナダや米国、欧州を中心に「クシュタール」や「サークルK」などのブランドでコンビニ店舗を展開。同社ホームページによると、ライセンス先を含め、約30カ国・地域に約1万7000店舗を抱える。カナダのトロント証券取引所に上場しており、時価総額は約800億カナダドル(約8兆5000億円)。これに対し、セブン&アイの時価総額は19日時点で約5兆6000億円で、アリマンタシォンを下回っている。

セブン&アイに買収提案をしたアリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard Inc.)はカナダのケベック州が本拠地の小売り企業でトロント証券取引所に上場している。カナダ、アメリカでコンビニ、ガソリンスタンドを展開している。企業買収を繰り返し大きくなった企業である。アリマンタシォンの時価総額は8月26日の終値ベースで749.9億カナダドル(約8兆599億円)であった。一方買収提案をされているセブン&アイの時価総額は本日8月27日の前場の終値ベースで5兆4,739億円であった。

アリマンタシォンの買収提案はセブン&アイが国内外に広がるコンビニのネットワーク、国内のスーパーマーケットの店舗数から流通業界における影響力が非常に大きく、食料や生活必需品の供給に関わる企業であり、傘下にセブン銀行、警備事業等も保有しており、経済安全保障の観点から日本政府がリスクを評価する必要がある。

そもそもアリマンタシォンはコンビニのセブンイレブンのみ欲しいのであって、業績が低迷するGMS(総合スーパー)のイトーヨーカ堂は欲しくないのではと推測される。イトーヨーカ堂の業績が良ければ魅力的な買収対象であると思うが、事業の立て直しをする必要があり、それだけのノウハウをアリマンタシォンは持っている企業ではない。そうなると一旦はセブン&アイ・ホールディングスとして買収してもイトーヨーカ堂は別の企業、あるいはファンドに売却する可能性がかなり高いのではないかと思われる。

アリマンタシォンは買収を繰り返して大きくなった企業で、海外の企業も買収提案をしてきたが、2021年にフランスの大手小売りチェーンのカルフールに対して買収提案をし、GMS事業に進出を狙ったが、フランス政府が食料供給の安全保障を理由に懸念を示したため、最終的に買収提案は撤回された。

セブンイレブンはコンビニ・チェーンの中で一番競争力が高く日販(一店舗当たりの平均売上)は競合のファミリーマート、ローソン等より遥かに高く67万円である。セブン&アイの業績不振の原因はイトーヨーカ堂である。イトーヨーカ堂の立て直しが出来る企業以外はセブン&アイの買収はすべきではないと思っている。日本国内のGMSの立て直しに成功した企業はパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)のみである。PPIHは2019年にユニーを完全子会社化し、ドンキホーテのノウハウを導入し、マーチャンダイジングを統合し、PB/OEM商品を増やして立て直しに成功した。また、PPIHはセブン&アイのようにトップダウンの経営スタイルではなく、現場に権限を持たせ、個店の経営力を上げるスタイルで成功している。

個人的にはアリマンタシォンによる買収提案は不成立になる事を望んでいる。というのは日本の小売り市場に進出した外国企業は失敗して撤退しているケースばかりだからである。特にGMSに関してはウォルマート、カルフール、テスコと日本に進出したものの、失敗し撤退した。

セブン&アイは海外にセブンイレブンの店舗を多く持っている。店舗数が多い順にタイ:14,391店、韓国:13,495店、アメリカ:12,792店等海外店舗数は62,912店舗を保有している。(2023年9月時点)アメリカ国内のコンビニの店舗数はセブンイレブンが一位、二位がアリマンタシォン・クシュタールのクシュタールであるそうだが、米連邦取引委員会(FTC)が両社の経営統合によって商品やサービスの価格が上昇し、消費者に悪影響を及ぼす恐れがあるため異議を唱える可能性が高いとFinacial Timesで報じられており、買収提案の成り行きが注目される。