今週の注目投資トピックは「「東京メトロ」上場、今後の成長どう描くか」元記事はこちら

以下、10月23日のニュースィッチ by 日刊工業新聞の記事より抜粋引用。

東京メトロが23日、東証プライム市場に上場する。事前に投資家の需要をまとめるブックビルディング(需要申告)での旺盛な引き合いで売り出し価格は1200円に引き上がり、上場時の時価総額は約7000億円。新規株式上場(IPO)としては、2018年に上場したソフトバンク以来の大型案件となる。都心を貫く収益力の高いドル箱路線を抱え、首都圏の私鉄では輸送人員、旅客収入も最大の東京メトロ。その企業価値や収益性には市場の期待も高い。

東京メトロの発行済み株式は国が53・4%、東京都が46・6%を保有しており、上場に伴い、それぞれ保有株式の2分の1ずつを売却する。上場後の国と東京都を合わせた保有比率は50%となる。東京メトロは当初の売り出しの想定価格を1株当たり1100円と見込んでいた。だが、仮条件の設定を経て旺盛な引き合いがあったことで、売り出し価格は1200円に引き上がった。売却益は国が約1900億円、都が約1600億円になるとみられる。

市場の東京メトロへの期待の根拠はその収益力だ。東京メトロの24年3月期の輸送人員は23億8473万人と、2位の東急電鉄の10億5214万人に比べ2倍以上となる。また路線の収益力でも、22年度の1日1キロメートル平均の旅客収入が約395万円と私鉄ではトップだ。2位の東急の約313万円と約80万円の開きがあり、その収益力の高さが数字に表れている。

IPOは株式の売却益を成長投資に振り向けるのが定石。だが今回の東京メトロの上場では、新株を発行しないため、既存株主である国と東京都が売却益を得るのみ。東京メトロには売却益は入らない。

東京メトロにとっての上場のメリットは経営の自由度が広がることだ。従来は事業方針を国と東京都に諮っていたが、意思決定の裁量が増す。上場企業となった東京メトロがまず解決すべき経営課題の一つが、鉄道事業の依存度の高さだ。営業収益における旅客収入の比率が約90%を占める。この一本足打法を打開すべく、山村社長は「不動産事業を強化する」とし、他の鉄道事業者と同じく、不動産開発など非鉄道事業に注力する方針を示す。東京メトロは4月に不動産アセットマネジメント事業への参入に向け資産運用会社を設立し、不動産事業拡大に先鞭を付けた。将来は1000億円規模の運用を目指す。

東京メトロ(正式名称は東京地下鉄、9023)が先週10月23日に上場した。売り出し価格は1,200円で23日の初値は売り出し価格より36%高い1,630円、終値は1,739円で初日の時価総額は1兆円を超え、今年最大のIPOであった。翌24日には上場来高値の1,780円をつけたが引けにかけて売られ、25日には5%強売られて1,609円で引けた。週明け28日の前場の終値は25日終値より3%強高い1,658円であった。

さて、東京メトロの収益力であるが2023年3月期の1日1キロメートル平均の旅客収入が395万円と私鉄ではダントツのトップであり、2位の東急の313万円に82万円の差をつけている。旅客収入が全営業収益の約90%を占めている。東京メトロの成長戦略は不動産事業の強化で4月に不動産アセットマネジメント事業への参入に向け資産運用会社を設立したとある。

東洋経済オンラインの10月24日の記事によると

「東京メトロは大手デベロッパーのヒューリックにエース級の人材を送り込み、不動産開発のノウハウを学んでいるようだ。これまでに3~4人ほどがヒューリックに派遣されたのではないだろうか」

ヒューリック(3003)に不動産開発のノウハウを学ぶために人材を送っているとの事である。東京メトロが現在手掛けている不動産事業は沿線の商業施設の開発、運営を行っており、駅直結の「メトロピア」や「エチカ」の運営を行っている。その他に東急が手掛ける渋谷マークシティ、渋谷ヒカリエ、東急プラザ原宿「ハラカド」に参加している。これらの大規模開発は、交通インフラと商業施設のシナジー効果を最大化するために、東京メトロと東急が協力する形で進められた。東京メトロは主に鉄道網の利便性を高める役割を果たしており、不動産開発の直接的な運営や企画は東急が主導した。

東京メトロは沿線の駅直結の土地を所有している。開示された情報によると銀座駅周辺、六本木駅周辺、渋谷駅周辺、北千住駅、池袋駅周辺に土地を所有しているとの事であるが、他の駅直結の土地も所有している可能性は高い。渋谷は東急と共同で開発をしたが、東京メトロも別に一定の土地を所有している。六本木に関しては六本木ヒルズに隣接するエリアで再開発中との事である。東京メトロが所有する駅直結の土地の価値を考えると不動産事業のポテンシャルは大きい。

また、本業の鉄道事業に関しては有楽町線は豊洲から江東区住吉まで延伸、南北線は白金高輪から品川までの延伸が決定している。他に都心と羽田空港を結ぶ羽田アクセス線、東京駅から江東区の東京ビッグサイトを結ぶ新線の計画がある。特に都心と羽田空港を結ぶ路線が新設されれば需要が大きそうである。

最後に東京メトロの株価バリュエーションであるが、本日10月28日の後場の場中の株価1,656円で予想PERは18.4倍、PBRは1.4倍、時価総額は9,621億円である。上場初日に時価総額が1兆円を超え、首都圏私鉄の上場企業としては東急(9005)、西武ホールディングス(9024)に次いで三番目の時価総額になった事から割高ではないかとの意見も散見された。しかし、株価は将来のキャッシュフローを織り込んで形成されるものであり、不動産事業のポテンシャルの高さ、また新規路線の需要の大きさを考えると妥当であると考えている。