2024年も既に3か月が過ぎ、本日より新年度の4月である。今年は株価の上げのペースが早過ぎて買いそびれてしまった人達も多くいると思う。このレポートでは乗り遅れた人達にも参考になるように日経平均株価4万円台の高値圏でも出遅れ銘柄に投資する事で中長期的にテンバガーを目指す事を目的に銘柄を探してみる。
1~3月に日経平均はダントツの上昇率
世界の株式市場のなかでこの3か月間日経平均株価は21.62%上昇し、ダントツのパフォーマンスであった。TOPIXの上昇率は世界第2位で17.35%であった。一方ニューヨークダウの上昇率は5.97%、ナスダックの上昇率は10.12%であった。
1~3月の相場の主役はやはりエヌビディアの驚異的な業績の伸びの影響を受けて半導体株であったと言えるだろう。半導体関連銘柄の年初来騰落率は東京エレクトロン(8035)は205.3%、アドバンテスト(6857)は221.6%、レーザーテック(6920)は92.2%、ディスコ(6146)は354.4%、SCREENホールディングス(7735)は371.9%、ルネサスエレクトロニクス(6723)は125.6%、ソシオネクスト(6526)は265.5%、信越化学工業(4063)は102.8%等日経平均、TOPIXをはるかに上回るパフォーマンスであった。
出遅れ銘柄の探し方
さて日経平均株価四万円台からどうやって出遅れ銘柄を探すかについてであるが、半導体、パワー半導体、生成AI等の鉄板セクター、株探テーマランキングの人気のテーマセクターランキング8位の地方銀行、6位のインバウンド等から出遅れている銘柄を選ぶというのは有効であると考えている。あるいはPBR1倍割れ銘柄で業績も良い銘柄を選ぶ、またアクティビストにより大量保有されており、これから株主還元の改善が望まれる銘柄を探す等も効果的ではないかと思っている。
年末に出したテンバガー5選の年初来騰落率
実際に出遅れ銘柄を選ぶ前に年末に出した「2023年の株式市場の振り返りと2024年版テンバガー5選!」 で選んだ5銘柄の年初来騰落率についてまずは見てみる。
選んだ5銘柄と年初来騰落率は以下の通りである。
①物語コーポレーション(3097) 115.3%
②大和工業(5444)90.6%
③レゾナック・ホールディングス(4004)79.5%
④野村マイクロ・サイエンス(6254)478.8%
⑤東京エレクトロンデバイス(2760)209.8%
やはり半導体関連の野村マイクロ・サイエンスと東京エレクトロンデバイスのパフォーマンスは突出して良かった。引き続きこのレポートでも半導体関連の出遅れ銘柄はこれからの上値ポテンシャルが望めると考えている。
出遅れテンバガー候補銘柄6選
以下、出遅れテンバガー候補6銘柄を紹介する。
①AGC(5201)
株価(2024/3/29) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
5,528円 | 1.17兆円 | 49.3% | 4.5% | 4.4% |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | PEGレシオ | 配当利回り |
22.13倍 | 0.81倍 | 4.8倍 | ▲1.1倍 | 3.8倍 |
企業概要:旧社名旭硝子。世界最大のガラスメーカー。建築材料、自動車向けなどのガラスを中心に、電子部材やその他の化学関連素材を製造・販売している。AGCは次世代半導体の製造工程で使われるEUV露光用フォトマスクブランクスの研究開発を2003年に開始し、ガラス材料から膜材料まで一貫生産している。
業績状況:AGCは2022年12月期は過去最高売上を達成したものの、ディスプレイ、プリント基板材料、ロシアにおける建築用・自動車用ガラス、欧州自動車用ガラスの各事業で計1,262億円の減損損失を計上した事により当期純損益は▲32億円となった。2023年12月期は売上高は前期比微減の2兆193億円、営業利益は▲30%の1,288億円、当期純利益は658億円であった。2023年12月期は塩ビ市況の低迷、医薬の受託製造が苦戦したが、車用ガラスの値上げにより自動車用ガラス事業は大幅改善した。EUVフォトマスクブランクスに関してはAGCは生産能力を増強しており、2025年には400億円の売上を目標としており、株式市場でも高い確率で注目されるのではと考えている。ちなみにEUVフォトマスクブランクスの競合HOYAの予想PERは39.77倍、PBRは7.46倍で比べるとAGCはかなり割安でありそれだけ上値が大きいと期待している。
②日本電子(6951)
株価情報(2024/3/29) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
6,258円 | 3,197億円 | 50.8% | 16.1% | 14.5% |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | PEGレシオ | 配当利回り |
17.76倍 | 2.89倍 | 10.6倍 | 0.8倍 | 1.18倍 |
企業概要:電子顕微鏡で世界首位。半導体製造装置事業を拡大している。半導体チップの微細化において必要なマルチビーム描画装置という多数の電子ビームを使い、複雑かつ微細なパターンを短時間で描くことができる装置も手掛ける。また、半導体向け顕微鏡も需要が高い。この他に分析機器、医用機器も手掛けている。
業績状況:2024年3月期の状況であるが、調整局面の先端半導体市場を反映してマルチビーム描画装置の売上が前期に比べて低調に推移した事により3Q決算では売上は前年同期比▲0.8%の1,069億円、営業利益は同▲24%の133億円、四半期純利益は同▲23.5%の101億円と減益となっている。しかし、半導体の微細化とともにマルチビーム描画装置は来期は回復すると思われる。今期もパワー半導体向けのシングルビーム描画装置の需要は中国を中心に需要が強く、半導体・電池向け顕微鏡の需要も強く採算も向上している。2023年3月期通期時点の製品別利益率を見るとビームマスク描画装置が47.01%、電子顕微鏡、分析機器の利益率が6.13%、医用機器の利益率が2.88%とビームマスク描画装置の利益率が桁違いに高く、これからの需要増を考えると中期的に利益が大幅に増加するとみられ株価バリュエーション予想PER20倍以下で買っておくとかなりのアップサイドを望めるのではないかと考えている。
③東京応化(4186)
株価(2024/3/29) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
4,579円 | 5,544億円 | 72.9% | 6.9% | 8.7% |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | PEGレシオ | 配当利回り |
31.5倍 | 3.02倍 | 13.4倍 | 0.82倍 | 1.27% |
企業概要:半導体・プリント基板製造に用いるフォトレジスト(感光性樹脂)等の製造で世界トップシェア(26.1%)を誇る日本の化学材料メーカー。最先端の数ナノレベルの回路を持つ半導体製造に東京応化の微細加工技術と高純度化技術が使われている。他に無機・有機化学薬品の製造販売を手掛けている。なお、半導体製造装置事業は2023年3月にAIメカテック社に事業譲渡した。ロジックの微細化やメモリーの高層化が更に進む事でデバイス当たりのフォトレジストの使用量は増加するので今後の東京応化の業績はシリコンサイクルの影響は受けるものの基本的には拡大する事が予想される。
業績状況:2023年の半導体市場はスマホやPCの需要の低迷からメモリーを中心に売上が減少し半導体市場全体では前年比11.1%減であった。(出所:Gartner)半導体市況の低迷の影響で東京応化の2023年12月期の売上は前期比▲7.5%の1,623億円、営業利益は同▲24.8%の227億円、当期純利益が同▲35.4%の127億円であった。2024年の半導体市場はWSTSの予想によると前年比13.1%増の5,883億6,400万ドル、Gartnerの予想によると同16.8%増の6,240億ドルと過去最大規模になるとの事であり東京応化の業績の回復も見込まれる。2024年12月通期の会社計画の当期純利益は前期比38.4%増の176億円の予想である。PEGレシオを計算すると今期の予想PER÷EPS成長率で31.5÷38.4%=0.82倍と割安である。
④山陽特殊鋼(5481)
株価情報(2024/3/29) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
2,248円 | 1,225億円 | 56.3% | 9.3% | 6.7% |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | PEGレシオ | 配当利回り |
14.41倍 | 0.55倍 | 6.7倍 | ▲0.6倍 | 2.89% |
企業概要:日本製鉄(新日本製鐵と住友金属が2012年に合併し新日鐵住金となり2019年に日本製鉄に社名変更)子会社の特殊鉄鋼メーカー。軸受け鋼国内首位。軸受け鋼とは耐摩耗性や転がり疲労寿命に優れた特殊鋼で、高炭素クロム軸受鋼の他、機械構造用鋼やステンレス鋼・耐熱鋼の一部がベアリング等に用いられる。特殊鋼の用途は自動車、建設、家電、メーカー、石油化学製品、輸送等である。2019年にスウェーデンのOvako Group ABを買収した。
業績状況:Ovako Groupを2019年に買収した後の2020年3月期は連結売上高は前期比大幅増だったが、単体の売上減、資材価格の上昇、インドの連結子会社ののれんの一括償却により営業赤字に転落し当期純損益も赤字となった。翌2021年3月期もコロナの影響で売上減、営業赤字、当期純損失となった。2022年3月期、2023年3月期は経済の正常化、販売価格の値上げにより黒字決算となり、2024年3月期に関しては欧州の経済低迷によりOvakoの販売低迷、中国経済の減速により3Q決算時に通期業績予想を下方修正した。3Q決算発表時に株価は15%近く急落し、そこからあまり回復していない状況であり、PBRは0.54倍と割安である。東証のPBR1倍割れ企業への改善要請、また親子上場解消の流れ、及び日本製鉄のUSスチール買収が成立しない場合には株主からの資本効率の改善要求は当然あると思われる。USスチール買収の金額は2兆円と言われているが、不成立の場合に時価総額1,225億円の山陽特殊鋼を20~40%プレミアムをつけてTOBする可能性は十分あると考えている。
⑤東京きらぼしファイナンシャルグループ(7173)
株価情報(2024/3/29) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
4,875円 | 1,475億円 | 5.2% | 6.2% | N/A |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | PEGレシオ | 配当利回り |
6.13倍 | 0.43倍 | N/A | 0.4倍 | 2.67% |
企業概要:東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が2018年に三行が合併し、きらぼし銀行が発足した。ネット専業のUI銀行は外貨預金や無担保ローンの取り扱いを開始し口座獲得促進している。また、ビジネスマッチング等の法人コンサルでは東和銀行と業務提携している。
業績状況:2018年に三行が合併して以降業績は積極的な法人営業展開により順調に拡大している。LBOや不動産等仕組み融資が好調であり、また預貸金利利ザヤが拡大している。日銀のゼロ金利解除により利ザヤは更に拡大する事が期待される。国内外の債券損失は重いが株式売却で補っている。地銀の中でもROEは6.2%と突出しているが、株価は割安であり、予想PER6.13倍、PBR0.43倍、PEGレシオ0.4倍である。ファンダメンタルが良好なのに株価は割安に放置されており、出遅れ地銀株として見直し買いが入る事を期待している。
⑥東海旅客鉄道(9022)
株価情報(2024/3/29) | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
3,726円 | 3.67兆円 | 41.8% | 5.4% | 5.3% |
予想PER | PBR | EV/EBITDA | PEGレシオ | 配当利回り |
11.11倍 | 0.9倍 | 5.6倍 | 0.2倍 | 0.75% |
企業概要:JR東海。JR東海は東海道新幹線と在来線12路線を保有しており、新幹線が収益の約7割を占めている。グループ事業で名古屋駅直上の高層複合ビルである「JRセントラルタワーズ」では百貨店、ホテル、オフィス等の事業を展開している。
業績状況:インバウンドで業績は絶好調である。2Q決算発表時、3Q決算発表時と2回業績予想を上方修正した。2024年3月期通期の会社計画は売上高が前期比18.4%増の1兆6,850億円、営業利益は同42.3%増の5,330億円、当期純利益は同50.4%増の3,300億円である。2024年3月期は大幅増益予想であり、為替も円安が継続している事から更にインバウンド需要の拡大が期待されているがJR東海の株価バリュエーションは予想PERが11.11倍、PBRが0.9倍、PEGレシオが0.2倍と割安である。株価が好業績を反映していないのはリニア新幹線の2027年の開業を静岡県の反対しているというのはずっと報じられてきており、JR東海が断念したという事が影響しているように思われる。しかし、JR東海が断念とあればJR東海の区間のみ断念という訳にはいかずJR東、JR西も断念せざるを得ない訳で株価バリュエーションに大きく差がつくのはロジカルとは思えない。むしろ株価が極端に低い時は買い場であると考えている。