梅雨明け前から暑い日が続きクーラーが欠かせない季節であるが、6月から大手電力7社が14~42%の値上げとなり物価上昇に対策を講じる必要性を感じている人も多いと思う。この記事では、こうした経済状況の中で注目を集めるリユース業界についてその理由となっている日本の現状を解説するとともに主要銘柄についてまとめてみる。
実質賃金は14カ月連続減少
岸田政権は2022年10月に発表した経済政策で賃上げを経団連に要請した。2023年の春闘の大企業の賃上げ率は3.91%となり、30年ぶりの高水準となった。しかし、物価変動の影響を除いた5月の実質賃金は前年比で14カ月連続で減少した。厚生労働省が7月7日に発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、5月の実質賃金は前年同月比1.2%減と前月の3.2%減からマイナス幅は縮小した。
名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は2.5%増の28万3868円と、伸び率は市場予想の1.2%増を上回った。増加は17カ月連続。 実質賃金の算出に用いられる持ち家の帰属家賃を除く消費者物価指数(CPI)は5月に前年同月比3.8%上昇と伸び率は前月の4.1%上昇から縮小。CPIは1月の5.1%上昇をピークに伸びは鈍化傾向にある。しかし、6月より家庭向け電気料金が14~42%の値上げとなり、電気代負担が大きくなるだろう。また、為替は1ドル=144円台と円安が続いており、食料、エネルギー資源を輸入に依存している日本では円安とインフレは高い相関関係にあり、これからも実質賃金は減少する事が予想される。
(出所:日経新聞電子版 2023年7月7日)
循環型社会の構築
2015年末にEUが”Closing the loop - An EU action plan for the Circular Economy”という政策パッケージを発表して以降"circular economy"という概念が世界的に広まった。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化する経済システムを意味し、これまでの一方通行でモノを使う「直線経済」からの脱却を目指すものである。
日本では、循環型社会の形成に向けて「3R」という概念が提唱されている。「3R」は以下の頭文字からなるもので、リサイクル推進の標語である。
Reduce(リデュース)…廃棄物の発生抑制(廃棄物の発生を少なくする)
Reuse(リユース)…再使用(物質をできるだけ再使用する)
Recycle(リサイクル)…再資源化(廃棄物を原材料やエネルギー源として再度活用する)
日本は、3Rを通じた循環型社会の国際的な推進を目指して、「3Rイニシアチブ」の提唱や「アジア3R推進フォーラム」の設立などを行ってきた。
このような世界的な政策的背景があり、リユースが推奨されているところにロシア、ウクライナ危機以降の先進国でのインフレにより低価格で購入できるリユース品のニーズが高まっている。
リユース市場は拡大
上述したように環境意識の高まりと物価高による低価格品の需要が高まりリユース市場が拡大している。フリマアプリの普及、インターネットオークションサービス、宅配買取サービス等の利便性が高いサービスがリユース市場の成長に大きく貢献している。一年前のデータであるが、リサイクル通信によると2021年のリユース市場は前年比11.7%増の2.7兆円となった。調査対象とした2009年以降12年連続での拡大であった。
(出所:リサイクル通信 リユース業界の市場規模推計2022(2021年版)2022年09月17日)
リユース業界の市場規模推計2022によると
販売経路別では、全ての経路で前年を上回った。店舗販売が前年比12.0%増と回復。2020年は、緊急事態宣言による休業や時短営業を強いられたが、外出自粛等も薄れたことから販売が好調だった。また、ネット販売のBtoCも同14.7%増となった。コロナ禍でECに注力する事業者の流れが反映されている。フリマアプリ等のネット販売のCtoCは、前年比10.4%増と堅調に拡大。片付けに伴う出品等に加え、利用者層の広がりが拡大を支えている。
商材別では、コロナの影響を大きく受けていたブランド品が回復。時計相場の上昇等も追い風となり、前年比19. 6%増と大きく伸びた。また、近年市場が拡大する玩具・模型も引き続き上昇し、同19.7%増となった。コロナで注目を集めるスポーツ・レジャー用品も同10.8%増と好調に推移している。
リサイクル通信によるとリユース市場は2025年には3兆5,000億円規模になると予測している。地味なテーマではあるが、市場として成長しており、上場している関連銘柄も少なくない。
上場リユース銘柄の業績動向
ここからは上場リユース銘柄の業績動向について紹介する。このレポートではフリマアプリ企業は取り上げず、店舗所有のリユース企業のみを取り上げる。
①ゲオホールディングス(2681)
企業概要:レンタルビデオショップ、リユースショップ等を全国に展開するゲオグループの持株会社。店舗型リユース首位。
業績推移:
(単位:億円) | 21/3 | 22/3 | 23/3 |
売上高 | 3,284 | 3,348 | 3,773 |
営業利益 | 43 | 82 | 106 |
営業利益率 | 1.3% | 2.4% | 2.8% |
純利益 | ▲7.5 | 59.8 | 56.8 |
株価バリュエーション:
株価* | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE |
1,925円 | 760億円 | 38.1% | 7.4% |
ROIC | 予想PER | PBR | EV/EBITDA |
3.6% | 10.86倍 | 0.99倍 | 6.8倍 |
*株価は2023年7月6日終値
事業形態:
ゲオグループの主なショップと主要な取扱い商材は以下の通りである。
●ゲオ(店舗数 1,089店)
リユースゲーム、リユーススマホ、映像・音楽レンタルでトップシェア。新品ゲーム機器・ソフトのほか、新品AV家電・スマホアクセサリーを展開。
●ゲオモバイル(単独店舗20店)
ゲオに併設する他単独店としても出店しており、リユースモバイルのトップシェア。スマホの専門スタッフによるサービスを提供。
●2nd STREET(国内803店、海外52店)
リユース衣料、服飾雑貨のトップシェア。買取専門店、アウトドアや楽器の専門店も展開。
●OKURA (おお蔵、23店)
ラグジュアリー商材のリユースに特化。主に時計とバッグを取り扱う。おお蔵のオークションを通じて、安定的な商材供給を実現している。
●Luck Rack(ラックラック、21店)
メーカーから余剰在庫を調達し、低価格帯で提供するオフ・プライス・ストアを展開している。
直近決算概況:2023年3月期通期決算は売上高が前期比12.7%増の3,773億円と四期連続の増収を達成した。物価高の生活防衛手段としてのリユース需要の高まりに加え、リユース購入への抵抗感が薄くなる意識変化により2nd STREETの売上好調が続き、また、家庭用ゲーム機「PlayStation 5」本体の供給改善もあり好調な売上であった。
レンタル売上高の縮小、販売管理費の増加が続くものの、リユースの衣料・服飾雑貨、リユースのスマホが大幅に伸張し、人件費や家賃、水道光熱費等の上昇影響はあったものの、リユース商材の売上総利益の増加を中心に吸収し、営業利益は前期比29.9%増の106億円と大きく伸長した。しかし、法人税等の増加により当期純利益は前期比5.1%の減益56億8,100万円であった。 営業利益率は前期比0.4pt改善した。
2024年3月期会社予想:
売上高 4,000億円(前期比6.0%増)
営業利益 130億円(同22.4%増)
当期純利益 70億円(同23.2%増)
2024年3月期出店計画:
●2nd STREET(国内65店舗)
総合リユース店中心に出店予定。海外31店舗(北米15店舗、台湾10店、マレーシア6店舗)
●GEO(60店舗)
GEO mobile単独店の出店を積極的に推進することに加え、GEOについても新フォーマットによる出店を行う方針。
●OKURA(4店舗)
繁華街立地に加え、買取専門店も出店する予定。
●Luck Rack(8店舗)
駅前立地の商業ビルに加えて、郊外ロードサイドへの出店予定。
財務状況:積極出店を行っているために有利子負債が増加している。2023年3月期時点で有利子負債は前期比17.3%増の679億円であった。有利子負債から現預金を差し引いたネットデットは2023年3月期時点で359億円と2022年3月期時点の135億円から倍以上に膨らんだ。自己資本比率は2023年3月期時点で38.1%、負債資本倍率は0.88倍、インタレスト・カバレッジ・レシオは17.92倍であった。
②ブックオフグループホールディングス(9278)
企業概要:中古本首位ブックオフの持株会社。店舗とECの連携強化。中古本以外に洋服・ブランド品・雑貨・スポーツ用品・食器のリユースも手掛けている。
業績推移:
(単位:億円) | 20/3 | 21/5* | 22/5 |
売上高 | 844 | 936 | 915 |
営業利益 | 14 | 19 | 18 |
営業利益率 | 1.7% | 2.1% | 1.9% |
純利益 | 2.4 | 1.6 | 14 |
*2021年から決算期変更。21/5期は12か月ではなく、14か月分の業績数字である。
株価バリュエーション:
株価* | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE |
1,254円 | 248億円 | 38.0% | 8.0% |
ROIC | 予想PER | PBR | EV/EBITDA |
2.3% | 12.71倍 | 1.37倍 | 9.4倍 |
*株価は2023年7月6日終値
事業形態:
●BOOKOFF(616店舗)
本・CD・DVD・ゲーム・トレカ・ホビー・携帯電話等など
●BOOKOFF SUPER BAZAAR(48店舗)
「BOOKOFF」+洋服・ブランド品・雑貨・スポーツ用品・食器など
●BOOKOFF PLUS(73店舗)
「BOOKOFF」+洋服・服飾雑貨など
●ブックオフオンライン
書籍やコミック、CDやDVD・ゲーム等の売り買いができる日本最大級の中古販売・買取サイト
●総合買取窓口(15店舗)
洋服・ブランド品・小型家電などを中心とした買取特化型店舗
●hugall(ハグオール、百貨店内10拠点)
大手百貨店に買取相談窓口を開設。ブランド品、ジュエリーのほか、骨董品、美術品などの高価格帯商材を買い取り、EC及びBtoBで販売。
●アイデクト(百貨店内、商業施設内14拠点)
ジュエリー オーダー&リフォーム スペシャリティストア
米国店舗(9店舗)現地での本・ソフトメディアの買取・販売のほか、日本国内のアニメ商材などが人気を博している。
マレーシア店舗(8店舗)日本国内のBOOKOFF等の店舗で販売に至らなかった商品を現地で販売。「Preloved in Japan」をコンセプトに、商品量の多さ、価格の安さが現地のお客様のニーズにマッチ。
また、東京・表参道の新刊書店「青山ブックセンター」の運営を手掛けている。
直近決算概況:直近の決算は2023年5月期3Qであった。売上高(累計)は前年同期比12.0%増の754億円、営業利益は同51.1%増の24億円、四半期純利益は同46.3%増の19億円であった。3Q単体の営業利益率は5.3%と前年同期比0.2pt改善、2Q比3.6ptと大幅改善であった。3Q決算発表時に通期業績予想の上方修正をしたが、上方修正後の通期純利益予想の97%を達成しているためにもう一度上方修正する可能性もあると見ている。
3Q業績はトレーディングカード・ホビーやアパレル、貴金属・時計・ブランドバッグなどの伸長により前年同期を大きく上回ったほか、公式スマホアプリ会員数は、当期末目標であった600万人を達成し、新規出店も順調に推移した。一方で、大型IT投資に関しては、一部開発スケジュールの見直しにより、費用計上が想定を下回った。
海外事業においては、マレーシアの「Jalan Jalan Japan」、アメリカ合衆国内の「BOOKOFF」いずれも売上高は前年同期を上回り、新規出店も順調に推移した。国内の富裕層をメインターゲットとしたプレミアムサービス事業における「hugall」、「BOOKOFF総合買取窓口」においては、一部商材において市場相場変動の影響を受けたものの、売上高は引き続き前年同期を上回った。
財務状況:積極出店をしているものの有利子負債は大きく増加をしていない。2023年5月期3Q時点で有利子負債は前年同期比14.8%増、2Q比▲4%の207億円であった。ネットデットは前年同期比22.1%増、2Q比▲1%の143億円であった。自己資本比率は2023年5月期3Q時点で38.0%、負債資本倍率は1.14倍であった。3Q時点のキャッシュフロー計算書は開示していないためにインタレスト・カバレッジ・レシオは計算できないが、財務レバレッジは前年同期の2.9倍から0.3倍低下、2Qの2.8倍から0.2倍低下している。
③コメ兵(2780)
企業概要:中古ブランド品販売首位。個人、法人より商品買取をし、店舗、web販売、法人販売(オークション、イベント、卸売り、ライブコマース)を行っている。タイヤ・ホイール事業、不動産賃も手掛けている。
業績推移:
(単位:億円) | 21/3 | 22/3 | 23/3 |
売上高 | 507 | 711 | 861 |
営業利益 | 5.9 | 37 | 52 |
営業利益率 | 1.2% | 5.2% | 6.0% |
純利益 | ▲6 | 23 | 37 |
株価バリュエーション:
株価* | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE |
4,895円 | 536億円 | 46.1% | 15.5% |
ROIC | 予想PER | PBR | EV/EBITDA |
8.9% | 13.41倍 | 2.24倍 | 8.3倍 |
*株価は2023年7月6日終値
事業形態:
●KOMEHYO(店舗数180店)
宝石・貴金属、時計、バッグ、衣料、着物、カメラ、楽器等の仕入・販売。
●KOMEHYOオークション
2022年から提供する新しいオンライン入札システムと、品物の状態を詳しく確認できる「オンライン下見」「実地下見」を組み合わせ、効率的に仕入れができるオークションプラットフォームを運営している。
●イヴコーポレーション(渋谷)
アパレル・スニーカー等の販売。
●シェルマン(銀座)
アンティーク時計、オリジナル時計、アンティークジュエリー等の販売。
●K-ブランドオフ(石川県金沢市)
宝石・貴金属、時計、バッグ等の仕入・販売、オークションの運営等。
●セルビー(上野)
宝飾品買取・販売事業、デジタル事業(システム開発、サイト構築)
●KOMEHYO HONG KONG LIMITED (香港)
宝石・貴金属、時計、バッグの仕入・販売
●米濱上海商貿有限公司(上海)
宝石・貴金属、時計、バッグ等の仕入・販売
●SAHA KOMEHYO COMPANY LIMITED(バンコク)
宝石・貴金属・時計・バッグ等の仕入・販売
●BRAND OFF LIMITED(香港)
宝石・貴金属・時計・バッグ等の仕入・販売
●名流國際名品股份有限公司(台北)
宝石・貴金属・時計・バッグ等の仕入・販売
直近決算概況:2023年3月期通期決算は売上高が前期比21%増の861億円、営業利益は同39.1%増の52億円、当期純利益は同64.1%増の37億円であった。営業利益率は同0.8pt上昇の6.0%であった。新規出店、買取イベント等により個人買取が好調であった。個人買取額は前期比127.8%増の435億円であった。また法人販売を強化したことにより大幅に売上、売上総利益ともに増加、経費コントロールによる販管費低減により大幅増益に寄与した。 2023年3月期に直営の買取専門店を28店出店した。1店舗で個人買取額年間1億円を目標としており、出店数の数だけ増収効果がある。買取イベントを全国33県で、累計135回(前期比123%)開催した。新規率は、およそ9割だった。買取イベントはKOMEHYOを利用したことのない新規顧客獲得、百貨店、商業施設との関係性構築の場になっている。常設店出店にもつながっている。既存店販売は前年比110.6%であった。海外売上高(免税売上は除く)は総売上高の9.4%であった。
2024年3月期会社予想:
売上高 1,000億円(前期比16.1%増)
営業利益 58億円 (同12.2%増)
当期純利益 40億円 (同7.9%増)
2024年3月期出店計画:買取専門店を30~40店舗出店の予定である。
財務状況: 積極出店を行っているために有利子負債が増加している。2023年3月期時点で有利子負債は前期比22%増の165億円であった。ネットデットは同37.7%増の61億円となった。自己資本比率は51.2%、負債資本倍率は0.69倍、インタレスト・カバレッジ・レシオは25.2倍であった。コメ兵は自己資本比率が51.2%とリユース企業としては財務が比較的しっかりしており、ROEが15.5%、ROICが8.9%と高い。
④バリュエンスホールディングス(旧社名SOU、9270)
企業概要:中古ブランド品販売2位。バッグ等のブランド品、時計、宝飾品、貴金属、骨董・美術品を一般消費者から買取り、自社オークションや店舗で販売するリユース企業。
業績推移:
(単位:億円) | 20/8 | 21/8 | 22/8 |
売上高 | 379 | 525 | 634 |
営業利益 | 6.3 | 12 | 19 |
営業利益率 | 1.7% | 2.2% | 3.0% |
純利益 | 3.1 | 7.3 | 9.7 |
株価バリュエーション:
株価* | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE |
2,429円 | 314億円 | 27.9% | 12.8% |
ROIC | 予想PER | PBR | EV/EBITDA |
5.2% | 25.33倍 | 4.15倍 | 11.7倍 |
*株価は2023年7月6日終値
事業形態:
●なんぼや
買取専門店。店舗数123店。時計、宝石、貴金属、ブランドバッグ、ブランド洋服、車、食器、骨董、ゴルフ等。
●ブランド・コンシェル
買取専門店。店舗数3店。買取品目はなんぼやと同じ。
●八光堂
骨董品、美術品買取専門店。店舗数9店。
●Star Buyers Auction(SBA)
世界中から入札、出品可能なラグジュアリー商材に特化したオークション。商材は時計、宝石、貴金属、ブランドバッグ、ブランド洋服、車、食器、骨董、ゴルフ等。
●The Eight Auction
骨董品、美術品専門のオークション。
●Hattrick
チームやアスリートに、新しいファンの獲得や収益源を生み出す、日本トップクラスのスポーツ専門 アスリート公認オークション。
●なんぼや不動産
不動産事業
●ALLU (3店舗)
ブランドバッグ、ブランド洋服、時計等のリユース品販売店。
●Yone Motors
高級車専門中古車販売店。
●Miney
持ち物をスマホで撮影するたけで、AIが資産価値を見える化し、売り時を教えてくれるアプリ。
直近決算概況:直近の決算は2023年8月期2Q。売上高(累計)は前年同期比28.8%増の336億円であった。販管費については、オフィス移転の一時費用発生等もあり、同27パーセント増加となったが、営業利益は同136.9%増の5億円となった。四半期純利益は黒転し1億5,900万円であった。2Q単体の営業利益率は前年同期比1.3pt改善、1Q比▲0.2ptの1.4%であった。GMV(流通取引総額)は前年同期比41.1%増の370億円であった。
時計相場の下落トレンドにより買い取りは計画未達となり販売は下振れした。しかし、オークションの委託出品増、小売り強化で2Qの粗利率は前年同期比1.3pt改善、1Q比0.6pt改善の27.3%となった。
SBAのパートナー会員数は国内で2,099社、海外で705社の合計2,804社と、国内・海外ともに好調に拡大し、BtoBでの世界最大規模のオークションに成長している。海外店舗は直営店舗とパートナー店舗を合わせて38店舗となった。
財務状況:2Qは仕入資金や設備投資、M&Aなどの事業拡大に向けた資金確保のため社債を発行、長期借入金を増やした。2Q時点の有利子負債は前年同期比21.6%増、1Q比9.4%増の152億円となった。ネットデットは前年同期比25.7%増、1Q比0.9%増の63億円となった。自己資本比率は2Q時点で27.9%、負債資本倍率は1.97倍であった。2Q時点のキャッシュフロー計算書は開示していないためにインタレスト・カバレッジ・レシオを計算できないが、財務レバレッジは前年同期の3.0倍から0.6倍上昇、2Qの3.4倍から0.2倍上昇し3.6倍となった。総合リユース店に比べてレバレッジが高いが、高額商品を仕入れて販売するためにどうしても借入が大きくなる。しかし、リターンはROEは12.8%、ROICは5.2%と総合リユース店に比べて高い。
⑤トレジャー・ファクトリー(3093)
企業概要:総合リユース企業として洋服・ブランド品・家具・家電・スポーツ用品・雑貨等の買取、販売を行っている。引越と買取の一括対応を行う「トレファク引越」や、不動産売却や賃貸管理サポートを行う「トレファク不動産」など、独自のサービスも展開している。宅配買取、出張買取も行っている。
業績推移:
(単位:億円) | 21/2 | 22/2 | 23/2 |
売上高 | 187 | 233 | 282 |
営業利益 | 10.7 | 10 | 26 |
営業利益率 | 0.6% | 4.3% | 9.1% |
純利益 | ▲1.4 | 7 | 17 |
株価バリュエーション:
株価* | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE |
1,704円 | 395億円 | 46.1% | 25.3% |
ROIC | 予想PER | PBR | EV/EBITDA |
16.3% | 21.14倍 | 5.85倍 | 11.6倍 |
*株価は2023年7月6日終値
事業形態:
●トレジャーファクトリー(トレファク78店舗、トレファクマーケット1店舗)
総合リユースショップ(洋服・ブランド品・家具・家電・スポーツ用品・雑貨等)
●トレファクスタイル(74店舗)
古着買取専門 他に古着買取専門店ユーズレット9店舗 ブランド古着買取ブランドコレクト6店舗
●トレファクスポーツ、アウトドア(7店舗)
タイ3店舗
台湾1店舗
グループ65店舗
総合業態13店舗(ピックアップ)
服飾専門業態37店舗(カインドオル)
ゴルフ用品専門業態15店舗(ゴルフキッズ)
直近決算概況:2023年2月期通期決算の売上高は前期比21%増の282億円。営業利益は同57.7%増の26億円。当期純利益は同43.2%増の17億円であった。営業利益率は同4.8ptと大幅上昇の9.1%であった。営業利益率の大幅上昇は売上総利益率の上昇0.6ptと販管比率の大幅低下4.2ptの結果であった。大幅増収の結果、販管費は増加したものの比率が低下した。営業利益・経常利益はいずれも過去最高益を大きく更新した。新規出店数は20店舗であった。大幅な増益によりROE29.8%、ROIC17.7%と前期から大きく伸長した。
販売・仕入はともに通期で前期比120%超の成長であった。全アイテム好調であった。生活雑貨は、食器や小物などの需要が伸び19.5%増。衣料はEC販売によるベースアップに加え、春先からの外出需要拡大などを背景にリユースファッションへの需要が堅調に伸び24.4%増。ブランド品などの服飾雑貨は、子会社にて好調に推移したことや10月以降インバウンド向け販売が回復し20.5%増。電化製品は2Q(6-8月)の猛暑による需要増加や冬場の暖房家電の需要増などの影響で17.8%増。ホビー用品は、アウトドアに加えスポーツ用品も堅調に伸び22.5%増。
財務状況:有利子負債は前期比▲2.4%の42億円であった。ネットデットは同▲41.4%の12億円となった。自己資本比率は46.1%、負債資本倍率は0.63倍、インタレスト・カバレッジ・レシオは143.5倍と前期比約二倍となった。財務レバレッジは同0.3倍低下し、2.2倍であった。
アナリスト・コメント
このレポートでは総合リユース企業3銘柄、ブランドリユース企業2銘柄の計5銘柄を取り上げた。この5銘柄の中でトレジャーファクトリーとコメ兵の強さが際立っていた。
トレファクは売上高が282億円と一番小さいが利益率がダントツに高い。総合リユース業で粗利率61.7%、限界利益率27.6%、営業利益率9.1%、ROE29.8%、ROIC17.7%と高かった。トレファクの取扱いアイテムの大きい順に衣料、服飾雑貨、電化製品であるが、これが今の日本の経済状況に合っているように思える。可処分所得が減少し続ける中でも必要性のある洋服やエアコン等の買い物を安く済ませられる店として需要が大きくなっているのだろう。高利益体質の源は仕入の仕組みの多様化であると思われる。店頭買取のみでなく出張買取、ウェブサイトを窓口とする宅配便による買取も行っている。出張買取は、コールセンターで一括して受け付けしている。店舗とは別に物流センターを設け、業者仕入を行い、品揃えの充実を図っているとの事である。高利益体質を維持したまま海外も含め拡大できるか注目している。
コメ兵はブランド品リユースでは圧倒的な強さで成長している。コメ兵は粗利率26.2%とブランド品の買取のために高くない。しかし、限界利益率14.8%、ROE15.5%、ROIC8.9%と高い。コメ兵の場合はブランド品の買取なので、偽物を仕入れないように鑑定士を自社養成し、近年ではAIも取り入れている。質の良いブランド品をより多く仕入れ、店舗、オークション、EC、ライブコマース等のチャネルで売っている。仕入のチャネルも店舗、業者仕入以外に買取イベントをデパート、ショッピング・モール等で頻繁に行い新規開拓をしている。海外はアジアを中心に進出しており、既に総売上高の10%近くが海外売上である。ブランド品は経済状況に関わらず需要があり、国内外で高い成長が期待される。
この二社に共通して言える事は仕組み作りをしっかりしている事である。仕入れ、販売チャネル共に多様化し、売れる商材をできるだけ多く仕入れ、複数のチャネルで販売している。この仕組みが高利益体質の源泉の一つであると言えるだろう。