早くも3月半ばを過ぎ、もうすぐ新年度入りである。今年はアメリカの関税政策の影響で2月以降下落相場となっていたが、ここに来てアメリカ株に比べて割安な日本株に資金がシフトしてきているとの報道を見かける。このような状況下で関税の影響を受けず、下値が限定されているバリュー株の中からお宝を探しテンバガーを狙うというのは有効な投資戦略だと考えている。

このレポートでは10万円以下で買えるテンバガー5選について紹介する。

目次

  1. テンバガーの条件
  2. テンバガーが狙える株5選

テンバガーの条件

ここではどういう銘柄がテンバガーを達成するかの条件について実例を交えながら紹介する。必ずしもこの条件を全て満たす必要はないが、一般的に以下の事がテンバガーの条件と言われる。

① 成長市場 or 新しい市場の開拓者

  • テンバガー銘柄は 成長市場にいるか、市場を自ら作り出す 企業が多い。
  • 例:
    • エムスリー(2413):オンライン医療情報という新市場
    • メルカリ(4385):フリマアプリ市場の開拓

チェックポイント: 「この企業が活躍する市場は、今後10年成長し続けるか?」

② 競争優位性(圧倒的な強み)

  • 競争相手に負けない 独自の技術・ブランド・シェア を持っている。
  • 例:
    • 日本電産(6594):ハードディスク用モーターの世界シェアNo.1
    • 任天堂(7974):独自のゲーム機とキャラクター資産

チェックポイント: 「この企業は、他社に簡単にマネできない強みを持っているか?」

③ 経営者のカリスマ性とビジョン

  • 孫正義(ソフトバンク)永守重信(日本電産) など、成長企業には 強い経営者 がいる。
  • 会社がどこを目指しているか明確なビジョンがある企業 は大化けしやすい。

チェックポイント: 「この会社の経営者は、強いリーダーシップを持っているか?」

④ 小型株(時価総額が小さい)

  • 時価総額が小さいほど株価の伸びしろが大きい。
  • テンバガー候補は 時価総額300億円以下の小型株 に多い。
  • 例:
    • スタートトゥデイ(現 ZOZO):小型株時代から10倍超に成長
    • サイバーエージェント(4751):時価総額数百億円から数兆円へ

チェックポイント: 「まだ知名度が低く、時価総額が小さい企業か?」

⑤ 収益性が高く、売上・利益が伸び続けている

  • 売上が毎年10%以上成長している企業 は狙い目!
  • 営業利益率が10%以上 あると、安定して利益を出せる。
  • 例:
    • エムスリー:毎年2桁成長、営業利益率30%超
    • 任天堂:コンテンツビジネスで高収益

チェックポイント: 「売上や利益が右肩上がりになっているか?」

⑥ 株価が割安 or 割安からの成長ストーリーがある

  • 最初は PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)が低い銘柄 が多い。
  • ただし、テンバガー銘柄は 成長とともに評価が上がる ので、最初のPERが高くてもOKな場合も。
  • 例:
    • メルカリ:最初は赤字でも、成長期待で株価上昇
    • ソフトバンク:上場当初は低評価→ITバブルで急騰

チェックポイント: 「今の株価は、将来の成長を考えると割安か?」

⑦ 外部環境の追い風がある

  • 政策や技術革新、社会の変化などで 急成長するタイミング が重要。
  • 例:
    • 再生エネルギー(脱炭素)→ エネルギー関連株
    • DX(デジタル化)→ SaaS企業やIT株
    • コロナ禍 → EC、遠隔医療、ゲーム株

チェックポイント: 「今後の社会の流れに乗れる企業か?」

⑧ 事業再構築

  • 事業再構築からテンバガーというパターンもある。ここでは実際の事例を紹介する。

1. 斜陽産業から成長産業へシフト

事例:富士フイルム(写真フィルム → ヘルスケア&医薬品)

  • かつてフィルム事業に依存していたが、デジタル化で市場が消滅。
  • 事業再構築でヘルスケア・バイオ分野へ転換し、株価上昇。

 事例:ノーリツ鋼機(写真機器 → ヘルスケア)

  • 写真現像機の市場縮小により、医療・ライフサイエンスへ再構築。
  • 低迷期を脱し、成長フェーズへ。

2. 赤字事業からの撤退 & 高収益事業への集中

事例:任天堂(ゲームハード・ソフト事業の強化)

  • 一時期、業績が低迷したが、Wii Uの失敗を経てスイッチで成功。
  • 利益率の高いプラットフォームビジネスを強化し、株価急騰。

事例:キーエンス(FA機器に特化し、高収益モデルを確立)

  • 事業を絞り込み、高付加価値の製品に集中。
  • 高利益率を維持しながら成長し、テンバガー達成。

M&Aを活用して新規事業を加速

事例:エムスリー(医療×ITの領域でM&Aを活用)

  • 医療従事者向けのオンラインプラットフォームを基盤に、  
    M&Aで新規事業を拡大しながらテンバガー達成。

事例:ソフトバンク(通信から投資・AI事業へ)

  • 通信事業からAI・半導体(ARM)への投資戦略を展開。
  • 事業ポートフォリオを再構築し、成長を加速。

 

テンバガーが狙える株5選

ここからは早速10万円以下で買えるテンバガーが狙える株5選について紹介していく。

①新田ゼラチン(4977)

最低投資金額:8万2,500円

企業概要:ゼラチン国内首位、世界5位。新田ゼラチンは子会社12社、関連会社3社で構成される。事業内容はコラーゲン事業であり、フードソリューション(食品用ゼラチン等、40%)、ヘルスサポート(コラーゲンペプチド、49%)、スペシャリティーズ(接着剤、工業用ゼラチン等、11%)を手掛けている。ペプチドは国内2位。インド、中国では現地生産。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
825円150億円46.8%N/A2.5%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
6.2倍0.8倍3.2倍2.4%0.4倍

業績推移:ゼラチン需要は世界的に伸びており、新田ゼラチンはその恩恵を受けるポジションにある。2024年3月期はアメリカの工場を生産性の低下から2024年1月に閉鎖し、固定資産の減損損失や事業整理損を特別損失として計上した事により当期純損失は▲18.5億円となった。アメリカの工場は閉鎖したが、需要の伸びているインドに関しては生産設備を増強し、2025年7月から稼働開始予定である。2025年3月期に関してはアメリカの工場で生産していた分が無くなり、売上はその分減少するが、生産性が低かったアメリカの工場が無くなり利益率は向上した。3Qが終わった時点で業績を上方修正し、通期の計画は売上高は前期比▲3.5%の390億円、営業利益は同112.3%増の39億円、当期純利益は黒字転換し、21億円と最高益を達成する予定である。

 

②ツカダ・グローバル・ホールディング(2418)

最低投資金額:5万7,100円

企業概要:欧米風邸宅での挙式・披露宴を行う婚礼が主力。ハワイ、バリ等でも展開。ホテル事業を拡大中。ホテルは訪日客需要で絶好調。2024年通期にワシントン州シアトルのホテル、ハワイのホノルルのホテル、品川区のホテルを買収した。訪日客需要が高い国内を含めホテル獲得継続方針。婚礼事業60%、ホテル事業35%、ウェルネス&リラックス5%。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
571円272億円28.9%16%5.2%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
5.2倍0.8倍5.2倍2.1%0.9倍

業績推移:コロナ禍の2020年12月期、2021年12月期はコロナ禍で赤字決算であったが、その後順調に業績を回復している。過去3期は売上、粗利率、営業利益率、純利益ともに伸びている。直近の決算の2024年12月期は売上高が前期比10.6%増の635億円、営業利益が同38.7%増の74億円、当期純利益が同8.8%増の51億4,700万円であった。引き続きホテルへの積極投資を継続し、案件の検討を進めて行く予定である。現在国内で保有しているホテルは「ホテルインターコンチネンタル東京ベイ」 「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」 「ストリングスホテル名古屋」 「キンプトン新宿東京」 「ANAホリデイ・イン 東京ベイ(2025年4月開業予定)

 

③アイスタイル(3660)

最低投資金額:4万6,800円

企業概要:化粧品・美容情報サイト「アットコスメ」運営。EC、実店舗の小売りと広告等マーケティング支援事業も行っている。Amazon.comと三井物産と業務資本提携を結んでいる。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
468円369億円36.6%10.2%8.8%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
18.2倍3.1倍7.2倍0.2%0.1倍

業績推移:2020年6月期と2022年6月期は赤字決算であったが、化粧品ブランド向けの広告・ソリューション提供を行うマーケティング支援事業が拡大し、2023年6月期以降業績は順調に拡大している。マーケティング支援事業の他にリテール事業(EC、実店舗)も好調に推移している。2024年6月期通期は売上高が前期比30.8%増の560.8億円、営業利益が同137.4%増の19.4億円、当期純利益が同341.2%増の12億円であった。今期も業績は好調で中間決算時点で売上が前年同期比22%増の330.7億円、営業利益が同75.8%増の14.95億円、中間純利益が同128.5%増の11億円であった。通期の会社計画は中間期を終わった時点で上方修正し、売上高が前期比17.7%増の660億円、営業利益が同44.3%増の28億円、当期純利益が同56.5%増の19億円と最高益を更新する予定である。

 

④日本信号(6741)

最低投資金額:9万700円

企業概要:鉄道、道路信号に強い三大信号会社のトップ企業。自動改札機、ホームドアや駐車場機器も展開。ロボティクスやセキュリティソリューションも手掛けている。無線式制御システムの「SPARCS」は中国、韓国、ブラジル、インドで採用されているが、アメリカに輸出は行っていない。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
907円566億円59.6%5.5%3.4%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
9.9倍0.6倍6.5倍3.4%0.5倍

業績推移:2020年3月期に売上高1,116億円、当期純利益65.84億円の最高益を達成した後に2021年3月期、2022年3月期、2023年3月期と売上高が1,000億円に満たなかったが、2024年3月期から回復基調である。2024年3月期の決算は売上高が前期比15.3%増の985億円、営業利益が同33.5%増の68億円、当期純利益が同31.2%増の53億円であった。今期も業績は堅調で2025年3月期通期の会社計画は売上が前期比1.5%増の1,000億円、営業利益が同17.2%増の80億円、当期純利益が同6.6%増の57億円の予定である。日本信号の業績は社会インフラ関連の需要に支えられ、景況感に大きく左右されにくい傾向がある。新興国でのインフラ整備の進展に伴い、製品やサービスへの需要拡大が期待される。

 

⑤塩水港精糖(2112)

最低投資金額:3万5,000円

企業概要:三菱商事の系列企業。パールエース印の砂糖を生産販売。東洋精糖やフジ日本と共同生産している。オリゴ糖に注力し、ビーツ関連商品も手掛け健康志向が高い商品を開発している。

株価時価総額自己資本比率ROEROIC
350円96億円56%9.2%3.7%
予想PERPBREV/EBITDA配当利回りPEGレシオ
4.6倍0.6倍4.5倍2.9%0.1倍

業績推移:2020年3月期以降2023年3月期まで売上高は200億円台であったが、2024年3月期には値上げ効果を享受し、売上高が300億円台に乗せて業績が大きく伸びた。売上高は前期比12.9%増の315.5億円、営業利益は同140.1%増の14.95億円、当期純利益は同196%増の14.75億円と最高益を達成した。今期も業績は砂糖の前期の値上げ、オリゴ糖製品のTVCM、ビーツ製品のEC販売も好調で業績の上方修正を行った。今通期の会社計画は売上高が前期比2.4%増の323億円、営業利益が同94%増の29億円、当期純利益が21億円と最高益を更新する予定である。