2023年も早くも9月に突入した。9月9日土曜日に日銀植田総裁が「物価上昇に確信が持てればマイナス金利解除も選択肢の一つ」と発言したが、日本経済もインフレが本格化しつつある。

9月11日には9年8か月ぶりに長期金利が0.7%に上昇した。インフレ時にはグロース株がアンダーパフォーム、バリュー株がアウトパフォームしやすい。また、東証の市場改革で超割安なプライム上場企業は上場維持の為に資本効率を引き上げて株価を上昇させる事が必須であるという事もバリュー株投資を下支えしている。

この記事では、バリュー株投資第二弾のレポートとしてPBR1倍割れでキャッシュリッチで財務が安定しているプライム上場企業をスクリーニングし、その中から5銘柄についてファンダメンタル分析をしたい。

目次

  1. 一部中国株から日本株へのシフト
  2. PBR1倍割れプライム上場企業808社
  3. 海外投資家はTOPIXへシフト
  4. 超割安銘柄をスクリーニング
  5. 前回のレポートで取り上げた四銘柄のフォローアップ
  6. スクリーニング結果

一部中国株から日本株へのシフト

前回「バフェット効果はここにも及ぶ!?超割安銘柄でテンバガーを目指せ!」を書いてから3か月が経った。その間に日経平均株価は7月上旬に33年振りの高値の3万3753円33銭を付けたがその後は中国経済への不安から下落した。8月末になり米経済指標が景気の軟調を示唆し、高止まりしていた米長期金利が低下し始め、また中国当局が不動産市場の問題の対応策に本腰を入れ始めたとの見方から安心感が広がり日経平均株価は9月5日に終値で3万3千円台を回復した。

9月1日に内閣府が2023年4~6月期国内総生産(GDP)のGDPギャップがプラス0.4%だったとする推計値を発表した。実質の年率換算では2兆円程度の需要超過となる。プラスとなるのは2019年7~9月期(プラス1.2%)以来15四半期ぶりである。また8月半ばに発表された7月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比3.1%上昇と11カ月連続で伸び率が3%台となっている。一方中国経済は不動産市況のバブル崩壊、内需の不振など日本とは反対にデフレ突入の瀬戸際にある状況で一部の海外投資家は中国株を売り日本株にシフトしていると見られている。海外投資家の売買動向は8月第三週、第四週と1兆3,440億円の売り越しであったが、8月27日から9月2日の一週間に5,319億円買い越した。四半世紀以上続いたデフレからの脱却の可能性で海外投資家が再び日本株買いに積極的になっている状況である。

PBR1倍割れプライム上場企業808社

9月7日時点で東証プライム上場企業1,834社のうち808社がPBR1倍割れであった。つまり東証プライム上場企業のうち44%の企業が経営に何らかの問題があり、株価が超割安に放置されている状況である。日経新聞によると6月29日がピークとなった2023年6月の定時株主総会では、過去最高の82社に対してアクティビストファンド等から株主提案が行われた。株主提案を受けた企業はPBR1倍割れ或は1倍以上であっても資本効率が低い企業である。

PBR一倍割れのプライム上場企業、新市場区分移行の際に暫定的な経過措置を取られた企業はプライム上場基準を満たすように真剣に取り組む必要がある。3月決算の企業であれば、2025年3月末時点で基準をクリアしていない場合1年間の改善期間入りとなり、2026年3月末時点で上場維持基準に適合しなければ、上場廃止予備軍である「監理銘柄」に指定され、最短で2026年9月にも上場廃止となる。

海外投資家はTOPIXへシフト

9月8日の日経新聞電子版の記事でも取り上げられていたように海外投資家のTOPIX(東証平均株価)買いが鮮明になっている。

8月第5週(8月28日〜9月1日)は外国人のTOPIX先物の買越額が日経平均先物の3倍に達した。日経平均が優位だった4〜6月とは様変わりだ。東京証券取引所の低PBR(株価純資産倍率)改革への期待が薄れておらず、TOPIXの構成比率が高いバリュー(割安)株を買う流れは続きそうだ。大阪取引所が7日発表した株価指数先物(ミニ含む)の投資部門別売買動向によると、外国人はTOPIX先物を4735億円買い越した。7月第2週(6566億円)に次いで今年3番目の大きさだった。一方、日経平均先物の買越額は1551億円にとどまった。

「バフェット効果はここにも及ぶ!?超割安銘柄でテンバガーを目指せ!」を書いた時には流動性が高いプライム上場の225銘柄で構成される日経平均株価のパフォーマンスがTOPIXのパフォーマンスよりも良かった。以下はTOPIXと日経平均株価のパフォーマンスの比較のチャートである。

                              (出所:YAHOO JAPAN ファイナンス)

上のチャートで分かるように日経平均株価のパフォーマンスはずっとTOPIXを上回っていたが、8月の終わりから9月初旬にかけてTOPIXのパフォーマンスが日経平均株価を上回ったのが分かる。TOPIXは東証プライム上場全銘柄の株価指数で、前述したが上場企業1,834社のうち808社がPBR1倍割れ(9月7日時点)の状況である。海外投資家を中心としてPBR1倍割れ企業が資本効率を上げて株価を上昇させる東証のPBR改革にベットしていると言える。

超割安銘柄をスクリーニング

前回のレポート同様キャッシュリッチで財務がしっかりしている超割安企業を探すにあたり以下の指標を使いデータベースでスクリーニングする。

①PBR(株価純資産倍率、Price-to-book):株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを見る投資尺度である。現在の株価が企業の資産価値(解散価値)に対して割高か割安かを判断する目安として利用される。

②ROE(自己資本利益率 、Return on equity):株主が拠出した自己資本を用いて企業がどれだけの利益をあげたか、つまり株主としての投資効率を測る指標である。日本の上場企業の場合8%が目標水準である。

③現金/総資産比率:総資産に対して現預金をどの位保有しているかを測る目安である。この比率が高ければ高い程、株主還元や利益を生む為のM&A等の新規投資に使われずにいる状況である。現預金から有利子負債を除いたネットキャッシュと時価総額を比較すると更に正確に把握ができる。その際には時価総額をネットキャッシュで割ったネットキャッシュ倍率が1倍未満であれば割安であると判断できる。どちらの指標を使っても良いと思うがこのレポートでは使用するスクリーニングの機能にネットキャッシュ倍率がないので現金/総資産比率を使う。

④EV/EBITDA:EV(事業価値、Enterprise value)=時価総額 + 有利子負債 – 現金等                   EBITDA = 営業利益 + 減価償却費                                       EV/EBITDA倍率はある企業を買収した場合、その企業が獲得するおよそ何年間の本業利益で、買収した際のコストを回収できるかを測定する指標であるが株価が割安かどうかの判断にも使える。計算式を見て分かるように現金を多く持つ企業は分子のEVが小さくなりEV/EBITDA倍率が低くなる。

⑤自己資本比率:総資本における自己資本の割合。自己資本比率が高いほど企業経営の安全度が高いが、自己資本比率が高過ぎてROEが低い場合は利益を上げるために資本を有効活用できていない。

ここでは前回同様①PBR0.9倍以下、②ROE8%未満、③現金/総資産比率25%以上、④EV/EBITDA5倍未満、⑤自己資本比率60%以上と設定してプライム上場銘柄をスクリーニングする。

前回のレポートで取り上げた四銘柄のフォローアップ

スクリーニングする前に前回のレポートで取り上げた銘柄の株価がレポートをアップした時点からどうなったかについてフォローアップする。

前回取り上げた銘柄はWOWOW(4839)、三陽商会(8011)、タカラスタンダード(7981)、積水樹脂(4212)の四銘柄である。この四銘柄の株価パフォーマンスは以下である。

銘柄2023/6/7の株価2023/9/11の株価株価パフォーマンス
WOWOW(4839)1,109円1,165円+5.05%
三陽商会(8011)1,590円2,085円+31.1%
タカラスタンダード(7981)1,755円1,850円+5.4%
積水樹脂(4212)2,142円2,363円+10.3%

結論として前回のレポートで取り上げた四銘柄全ての株価は上昇した。三陽商会は上昇幅が31.1%とダントツに高いが、業績回復による株価上昇である。2023年2月期通期で8期ぶりに黒字達成をしたが、その後も業績は好調である。6月30日に2024年2月期2Q決算を発表した。従前計画は赤字予想であったが、2Q決算結果は黒字を達成し、通期の当期利益予想を13.6%上方修正した。また、月次のブランド別、販路別業績もほぼ全てのブランドが前年同期比100%越えと好調なために株価が力強く上昇している。現社長の大江氏は三井物産の繊維部門を歴任の後にゴールドウィンで業績を回復させた経験がある。株価は大幅に上昇したが、9月12日時点のバリュエーションは10.3倍とまだ割安である。

次に積水樹脂であるが、7月31日に2024年3月期1Q決算結果の発表と同時に自社株買いの取得上限株数を従来の100万株(自己株式を除く発行済株式総数の2.48%)から850万株(自己株式を除く発行済株式総数の21.1%)に大幅拡大し、取得金額(上限)も当初発表の22億円から204億円へと9倍に拡大すると発表した。

                                 (出所:YAHOO JAPAN ファイナンス)

上のチャートは積水樹脂の6カ月のチャートであるが、7月31日の追加自社株買いのアナウンスの翌日の8月1日から株価が急騰しているのがはっきりと分かる。 8月1日の始値2,223円から9月1日の場中に付けた年初来高値の2,557円まで15%株価は上昇した。大規模な追加自社株買いにより積水樹脂の資本効率は大幅に向上するだろう。プライム上場を維持するために他のキャッシュリッチなPBR1倍割れ企業も追随する事が期待される。

スクリーニング結果

上述した5つの指標を使いプライム上場銘柄をスクリーニングした結果が以下である。全部で28銘柄である。

code#NameMktCPBRROESER*C/A*EV/EB*
9948アークス152,5750.95.864.127.34.4
6923スタンレー電気411,8780.85.474.328.13.1
7313テイ・エステック224,3380.71.773.630.53
7981タカラスタンダード133,4690.74.666.625.33.5
7296エフ・シー・シー97,7140.65.676.626.71.6
1884日本道路85,3390.9663.429.43.8
9729トーカイ67,6310.87.572.331.42.9
4095日本パーカライジング139,5210.85.970.731.73.2
7958天馬55,7770.73.577.8284
6340澁谷工業73,6220.86.663.330.23
1810松井建設22,6100.53.862.827.51
1982日比谷総合設備53,1470.87.274.332.24.9
4839WOWOW32,7700.53.670.530.40.8
6517デンヨー43,6920.75.473.325.23.9
8011三陽商会23,5580.65.868.538.22.6
7455パリミキHD20,1690.71.874.233.54.9
9622スペース22,9890.84.782.836.13.9
1930北陸電気工事27,9620.74.177.242.81.4
8917ファースト住建16,7300.45.570.228.42.5
7949小松ウオール工業27,9080.84.582.138.72.7
7628オーハシテクニカ23,1970.73.679.844.91.1
6151日東工器39,6840.74.587.537.93
7925前澤化成工業22,6490.63.881.927.33.7
6482ユーシン精機23,9260.7676.433.83.3
6419マースGHD47,7930.85.386.534.73.4
6763帝国通信工業18,9310.75.482.436.33.3
6853共和電業10,0550.63.369.628.52.9
3839ODKソリューションズ4,8420.94.270.9482.8

*注:SER(自己資本比率)、C/A(現金/総資産比率)、EV/EB(EV/EBITDA)データスクリーニング 2023/9/8時点 

1) マースグループホールディングス(6419)

企業概要:パチンコ店向け機器開発販売大手。パチンコ店向けプリペイドカードも扱う。FA市場、物流市場、アミューズメント市場向けのRFIDやバーコードを活用した自動認識システムの提案および販売を行う。また、傘下企業でホテル、レストラン事業も手掛けている。

業績推移:2021年3月期、2022年3月期とコロナ禍で売上が下がったが、2023年3月期は売上が200億円を回復。2022年11月より玉やメダルを使わないスマートパチスロの導入により需要が大きく2024年3月期1Qの売上高は前年同期比2.4倍増の84億円となった。アミューズメント関連事業のセグメント利益率は42.4%と同21.5ptと大幅改善し、四半期純利益は前年同期比9倍増のと大幅増益であった。また、インバウンド需要でホテル、レストラン事業も黒字転換した。

マースGHDの場合は2024年3月期1Q時点の営業利益率が33.4%と高かったが、自己資本比率が86.6%と高過ぎるためにROEが5.3%と低い。現預金は237億円、有価証券は136億円、有利子負債は0のためネットキャッシュは373億円である。スクリーニング時の時価総額は478億円でネットキャッシュ倍率は1.3倍と低い。スマートパチスロの需要で今期通期は会社計画で当期純利益が前期比43.1%増の予定であり、利益剰余金が積み上がり、更に資本効率の悪化が予想される。借入をして関連事業の買収や自社株買いの枠を大幅に拡大する等により資本効率を上げる事が期待される。

2)北陸電工(1930)

企業概要:北陸電力の子会社の電気工事会社。電気工事事業、再生可能エネルギー・燃料転換不動産事業を手掛ける。北陸電向け売上高3割強。地盤の北陸から徐々に全国展開。

業績推移:過去5年間売上高は400億円台半ばから後半で推移した。2023年3月期通期は受注高は過去最高の550億円を達成したものの工期の長い案件が多く前期比▲2.4%の448億円となった。建設資材の価格高騰、DX関連費用の計上のために当期純利益は同▲27.5%の16億円となった。2024年3月期1Qは大型案件の進捗が伸び悩み売上高は前年同期比▲3.3%の91億円、営業損益は▲1.5億円、四半期純損益は▲1.4億円となった。

6月13日付でプライム上場維持基準の適合に向けた進捗状況というリリースを出した。株主数、流通株式数、流通株式比率は適合しているものの、時価総額が2023年3月末時点で87.8億円と100億円に届かず、また平均売買金額はN/A(東証による確認)と基準の2,000万円に届いていないとの事であった。

中期経営計画によると今期通期の売上計画が530億円、経常利益が35億円、ROE7%、2025年3月期通期の売上計画が600億円、経常利益48億円、ROE8%とある。有価証券報告書によると2020年3月期に48億円の経常利益を達成した事はある。しかし、この時はデフレ下であり、ウクライナ、ロシアの戦争が始まる前であった。現在の建設資材の高騰状況が継続すれば会社計画目標を達成するのは難しく、今期はこのまま赤字という事も考えられる。

プライム上場維持を優先するならばまずは自社株買いの枠をもっと拡大するのが得策ではないかと考える。8月10日に自社株買いのアナウンスをしたが、23万株(発行済み株式の2.49%)を上限、取得金額は3億円が上限との事である。しかし、これでは資本効率があまり改善されないと思われる。1Q末(2023年6月末)時点で現預金が221億円と前期末時点から3か月の間に16億円も増加している。有価証券1億円、短期借入金が3億円でネットキャッシュは219億円。スクリーニング時の時価総額は279億円でネットキャッシュ倍率は1.3倍と低い。積水樹脂がそうであったように事業の先行きに高成長が望めない企業こそ思い切った自社株買いをする方が中期経営計画未達よりも遥かに投資家に評価され、北陸電工も発行済み株式の20%位自社株買いをするのが賢明ではないかと思われる。

3)日東工器(6151)

企業概要:迅速流体継手の最大手。迅速流体継手は様々な流体の配管を素早く接続・切り離しできる製品で自動車、電気製品、半導体、食品などの製造工場をはじめ、資源開発の現場や、燃料電池自動車などの輸送機器等にも利用されている。迅速流体継手事業以外に機械工具事業、建築機器事業を手掛ける。海外売上高比率は35%であった。

業績推移:過去三期は増収増益の好調な決算が続いた。2024年3月期1Q決算は半導体関連の生産調整による減収はあったものの機械工具事業は対面営業の再開で増収増益となり全体では前年同期比5.7%増の70億円、営業利益は同10.1%増の9億8,300万円だった為替差益が前年同期に比べて約半減した事等により四半期純利益は同0.2%増の6億5,900万円となった。原材料価格高騰のなかでもコスト削減努力により営業利益率は同0.6pt改善の13.9%であった。

日東工器の場合、自己資本比率87.5%と高過ぎるためにROEは4.5%である。1Q末時点で現預金は250億円、有価証券は48億円、有利子負債は0でネットキャッシュは298億円であった。スクリーニング時の時価総額は397億円でネットキャッシュ倍率は1.3倍と低い。2022年3月期~2024年3月期の3ヵ年の中期経営計画の目標は営業利益率15%、ROE8%である。(最終年度の2024年3月期通期時点での目標)しかし、自己資本が重過ぎるために未達になる可能性が高いと思われる。日東工器の今期の設備投資、研究開発費の予定額は開示されていないが、過去の設備投資と研究開発費の実績を見ると多くて30億円(2022年3月期実績)であった。自社株買いに関しては2022年3月期は実施がなかったが、2020年3月期~2023年3月期まで約10億円の実施があった。資本効率を意識した経営を行うのならば、2022年3月期に関しては自社株買いを行い、借入、あるいは社債を発行するという選択肢はなかったのだろうか。今期の自社株買いのアナウンスはまだないが、目標のROE8%を達成するために例年より大幅増の自社株買いを行うのであろうか気になるところである。

4)帝国通信工業(6763)

企業概要:電子部品メーカー。抵抗器、前面操作ブロック(ICB)、スイッチなどの電子部品の製造販売を主要事業とし、その他機械・設備等の製造販売等も行う。電子部品の用途は自動車、ゲーム、AV機器、住宅設備、家電、医療機器等多岐にわたる。

業績推移:過去三期の業績は連続増収を達成した。2023年3月期は売上高は前期比9.2%増の165億円となったが、営業利益は原材料費高騰等により同▲5.7%の16億円、固定資産除却損を94億円計上、投資有価証券評価損を2億円計上した事等により当期純利益は同▲12.4%の14億円となった。2024年3月期1Q決算は売上高は前年同期比0.6%増の37億円となったが、営業利益は固定費の上昇により同▲37.8%の2.2億円、四半期純利益は同▲3.6億円となった。1Q決算の発表と同日に自社株買いのアナウンスを行った。35万株(発行済み株式数の3.6%)を上限、取得金額は5億円が上限との事であった。

帝国通信工業の自己資本比率は82.4%でROEは5.4%である。1Q末時点で帝国通信工業の現預金は114億円、有価証券は2億円、短期借入金が4,000万円のネットキャッシュは115.6億円であった。スクリーニング時の時価総額は189億円でネットキャッシュ倍率は1.6倍と低い。中期経営計画によると今期2024年3月期通期の目標が営業CF16億円、ROE4.7%、ROIC4.2%、2025年3月期通期の目標が営業CFが18億円、ROE5.5%、ROIC4.7%とあるが、控えめ過ぎる印象がある。東証の定めるROEの基準は8%であるので8%を目標にした方が良いのではと思う。

帝国通信工業の設備投資と研究開発費の推移をみると2008年3月期には合わせて30億円位であったが、過去三期は10億円台半ばから後半でおさまっており、利益剰余金が毎年10億円位ずつ積み上がっている。2025年3月末時点でプライム上場維持の基準をクリアするために自社株買いを倍額の10億円位行い、株価を上昇させた方が良いのではないだろうか。

5)パリミキホールディングス(7455)

企業概要:眼鏡専門店チェーン大手。補聴器も取り扱う。子会社に百貨店向け金鳳堂。海外は中国、フィリピン、カンボジアで展開している。利益は上期偏重。

業績推移:1990年代は業績が良かったが、2000年に格安眼鏡チェーンのJINSが参入してから業績が悪化し、2016年3月期~2022年3月期まで赤字を計上し、2023年3月期は8期ぶりに黒字を確保した。売上高は前期比7.5%増の474億円、営業利益は7億3,200万円、当期純利益は5億円であった。不採算店の退店、またコロナによる規制が緩和された事等により黒字転換した。2024年3月期1Q決算結果は売上高が前年同期比4.5%増の120億円、営業利益は黒転し5.5億円、四半期純利益は前年同期比11倍の7.1億円であった。今期通期の会社計画は売上高が前期比1.9%増の483億円、営業利益が同40%増の10億円、当期純利益が同21.6%増の6.1億円である。

中期経営計画によると2025年3月期の目標が営業利益が15億円、当期純利益が10億円である。2023年3月期のほぼ倍の利益が目標である。長い間赤字を計上していたのに資産を圧縮した為に自己資本比率は74.2%ある。パリミキの場合は業績回復を達成する事が最優先されるべきであり、1Q末時点で現預金が127億円、有価証券は0、短期借入金が18億円とネットキャッシュが109億円であったが、自社株買い等に現預金を使うべきではなく厚めに手元流動性があった方が良いと思われる。パリミキの予想PERは33倍、PBRが0.7倍である。不採算店の退店等の努力により限界利益は上昇し、55.3%まで上昇し、競合のジンズホールディングスの限界利益率38.6%よりもはるかに高い。つまりパリミキの方が売上が増加すれば固定費を回収しやすく利益が出やすい状況である。業績回復のストーリーには株価は大きくアウトパフォームするので今後の業績動向に期待をしたい。